読めば読むほどバカになる!ヒトラーの読書術

読書について

『ヒトラーの秘密図書館』(ティモシー・ライバック著、文芸春秋)は、彼の思考の裏側が伺える面白い本です。

意外?ヒトラーは読書家だった!

この本はヒトラーが個人的に所蔵していた愛読書の中から、特に書き込みや傍線などの入った愛読書を検証。

彼の経歴に刷り合わせながら『あの』人格がどのように形成されていくかを書いてある一冊です。

ヒトラーは読書家だったのは有名で、学歴の低さをその読書量でカバーしたという話を以前読んだ本で知ってはいました。

彼はその人生でとにかく本を読み漁り、その内容を側近との食事でひたすら喋りまくっていました。

しかし、本好きの人間としてはどんな本を読めば「ああいう人間」が出来上がるのかが非常に気になるところです。

最初では、大ドイツ主義というか、後の彼の芸術に対する考え方の原点のようなものが仄見えます。

彼が1915年に購入した『ベルリン』という本。ベルリンの町を芸術的な観点から滅多切りにする内容です。今ならさしずめ実話BUNKAタブーの「このラーメンがマズイ!」みたいな感じですな。

面白いのはこの著者がユダヤ人で、ナチス政権下で禁書になってます。その本をヒトラーが熱心に読んでいて、最後の最後まで手放さなかったというのはある意味興味深いですよね。

後に彼は千年帝国の首都として、ベルリンを「ゲルマニア」に改造するプロジェクトにのめり込むのですが、このあたりからその雛形が出てきているみたいで面白いですね。

読むほどに視野が狭まる読書術!

この本、自分の読書を色々と反省する機会になってきた気がします。

なぜかといえば、ヒトラーの読書を見ていると時折自分が陥りそうになる『自家中毒のワナ』にずっぽりとはまってしまっているからです。

ヒトラーは確かに、人並みはずれた読書家であったのですが、読む本がひたすらに偏っています。ドイツ民族やユダヤ問題、人種についてのエセ科学本のようなものをむさぼり読んでいます。

今ならさしずめ、ムーばっかり読んでたりするようなもんですな。アレはあくまでネタとして楽しむものでしょ(笑)

話半分で読むから面白い!

さらに、そこからこの情報は正しいか、正しくないかという追究ではなく、『自分が元々抱いている観念という「モザイク」を完成させるための「石」を集める』プロセスを踏んでいます。要は都合のいい所をつまみ食いし、自分の考えを正当化するということです。

これでは、読めば読むほど、新たな視点をえるのではなく、頭の中がガッチガチに凝り固まっていってしまいます。

それが正しい内容ならばいいのですが、まぁ皆さん先刻ご承知のように、彼のやったことは極めて破滅的な結果になりました。

この本を読みながらヒトラーと対照的に浮かんでいるのは木原武一『天才の勉強術』で紹介されるヒトラーの同時代人、英国首相ウィンストン・チャーチルです。

無教養を濫読で克服したチャーチル

チャーチルは後に「第二次世界大戦回顧録」でノーベル文学賞を受賞しました。

彼も少年時代は劣等生でしたが、青年期に自分の教養のなさを盛り返そうと母親に手紙を送り『当時の知識人なら当然読むべき本』を送ってもらい片っ端から読んだ、という体験をしています。

何がいいか、悪いか分からないが、当時の知識人なら当然読んでおくべきとなれば、その幅は半端じゃありません。

文学や哲学、歴史や経済学など様々な分野に及んでいるみたいでこの時の猛勉強が後のイギリスの宰相を生んだといえるでしょう。

別の言い方をするならば、ヒトラーは『引き算の読書』を、チャーチルは『足し算の読書』を志向したといってもいいんじゃないかと思います。

ヒトラーは本から自分に合ったものだけを『引っ張り出して』身に付けた。

チャーチルはいいか、悪いかは判断できないから『本の知識を片っ端から』身につけた。

チャーチルの方法は当然、本ごとに相反するする部分もでてくるでしょうが、それは実体験で磨き上げればいいので、あらゆる方向からの知見を照らし合わせることで、より懐の深い思考ができるのでは、と私は考えます。

読書を通して何かを得たい、と思うなら当然、『足し算の読書』でないといけないわけで、これまで偏った本を読むという事をちょっと軌道修正させなきゃいかんわ…と反省しきりです。

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