池波正太郎の食べ物エッセイが美味そうすぎる件

読書メモ

最近、読み直しているのに、故池波正太郎さんの食エッセイがあります。

池波さんは平成になってすぐの1990年に亡くなられていますから、もう没後29年が経過しています。

しかし、『鬼平犯科帳』や『剣客商売』、『仕掛人藤枝梅安』などのシリーズもののほか、人の暮らしや心の機微を魅力的に書いた作品は今でも人気でドラマ化、アニメ化され、愛され続けている作家さんですね。

池波作品の名脇役は料理

そして、池波さんの作品でよく情景描写を助けるのが料理。しばしば登場しては食べる人物の性格や食べ物を囲む温かさを醸し出します。

面白いことに、メシを食べるシーンを描くのは大抵主人公やその周囲が多く、鬼平犯科帳でいえば外道な盗賊たちは食事のシーンがあまりない。

そして、温かさだけでなく時には殺伐たる薄ら寒さまでを描き出します。

印象に残るのは『梅雨の湯豆腐』という短編で殺し屋稼業の主人公が梅雨寒の折に湯豆腐を食べるシーン。梅雨に湯豆腐というのは主人公の心が冷え切っているみたいで、なんとも陰うつなイメージを感じます。

ここも池波さんならではと思いますね。

読者にとって、作品で出てくる料理は気になるところらしく、作品とは別に「作品に出た料理の写真集」が発売されるほど、深く読者の印象に残っているのです。

池波さんの料理描写に学ぶ

これだけメシを美味そうに書くのですから、ご本人もさぞかし様々なものを食べられたのだろうことは容易に想像できるというもの。

そんな池波さんの食にまつわるエピソードが満載なのが『食卓の情景』と『散歩の時に何か食べたくなって』です。

生前の池波さんが美味しいものをイキイキと書きつづったエッセイで、小説同様粋で読みやすいです。

特徴としては、お店に行くまでの経緯やお店の雰囲気や店員さんの仕草、料理を作る時の動きを想像できるくらいまで書き込んで、味に関してはクドクド講釈をしないんですよね。

私、料理に関する記事も書きますけど、この「読者に美味しそうだと感じさせる」テクニックはパクりたい。どうしても前のめりに書いてしまうから。欲があるんですかね〜。

巨匠池波正太郎はそんながっついたマネはしません。あくまでプロセスを丁寧に書き上げ、「こんな店ならさぞかし美味いだろうな…」って読者に思わせる。

それが読む者の想像力をどんどん刺激していく。その書きっぷりが実に憎たらしい!!

昭和の味を活字で追体験!

美味そうなのが「どんどん焼き」。メリケン粉を溶いて鉄板で焼き、野菜や肉、アンコなんかを巻いたりする、池波さんの少年時代の思い出の味。

中にはパンを小麦粉をまぶして焼き上げるパンカツなるものもあり、これが不思議とメチャクチャ美味いのではないか…と感じました。「炭水化物×炭水化物」ですから、ロカボ派だったらめまいを起こして卒倒しそうですがね…

あとは、ご存命の時の池波さんが愛した味がまた、いい。

ラーメンとかチャーハン、トンカツやドジョウ鍋、すき焼きと何を読んでもすごく美味しそう!『散歩のときに〜』では巻頭にお店の料理がカラーで載っているのですが…

なんか、昭和感が満ち満ちているのが懐かしいですね。

おじいちゃんとおばあちゃんに、生まれて初めて上野のたいめいけんでメシを食べた時の雰囲気を思い出しました。

昭和の料理史とも言えるこの二冊、おススメします。

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