たまには、頭を休めて読める歴史の本が読みたくなって、磯田道史さんの『徳川がつくった先進国日本』を読んでみました。
磯田道史さんって、最近ご活躍の歴史学者。
読みやすくって面白いので、試しに自分の手元にある本を調べてみると、案外磯田さんの本が多かったのでビックリしてます。
この本は、150ページほどの内容で、徳川幕府が日本最強の軍事政権から、どのように近代に近い「民を慈しみ、人命を尊重する」国家に変わっていったかを
逆からたどっていこう、という面白い視点を持っています。
逆からたどったら、かえって分かりやすかった件
この逆をたどるメリットって色々あるとは思うのですが、
時代が近いほど、我々の国家意識にかなり分かりやすいところからイメージができる、ということが大きいと思います。
この本だと、
をターニングポイントとして、幕府の政策の変化を読み解いていきます。
私は、割といい加減で、この幕府による政策の変化というのを完全に見逃しておりました
精々、戦国から平時に向かう時に、元々軍人だった武士が官僚化するイメージで、
それは本書の③と④あたりに関係してくるのですが…この本ほど良く考えていなかったなぁと。
結構幕府、頑張ってんじゃん!
本書を読んでいくと、幕府は結構柔軟に処方箋を繰り出すだけの能力もあったし、それが出来たからこそ、264年も幕府が持ったのだという「当たり前」のことも理解出来た次第です。
例えば①のロシア船来航では、対外国が日本を焼き討ちした事件で「国民を守る」意識の萌芽があり、
それは②の天明の飢饉で、「やらずぶったくり」だった政策を改め、
予期せぬ災害を放置することで食い詰めた人たちが一揆を起こしたりして国が乱れないように
福祉に配慮をする必要性を自覚したことから端を発する
さらに、そのルーツをたどれば、③の宝永地震前後で右肩上がりの成長期から、うまく成熟期に繋げるための施策および、それに適応した民衆の知的成熟が根っこにあり、
そこを突き詰めていくと、④の島原の乱で幕府が
「農民を痛めつけると、飯のタネが失われる上に自分にブーメランになって帰ってくる」という
強烈な体験として、それまで「絞れば絞るほど取れる」雑過ぎる扱いが変わってきたり、
という政治組織としての幕府の変革がとてもよく分かって面白いです。
他の本も加えて、歴史の見方を多面的に見てみたくなる本
とまぁ、時代をさかのぼる形で歴史をたどる考え方は
確かに因果関係がハッキリと分かるんですが、それがデメリットになっちゃうケースもあると思うんですよ。
それは、失敗例、間接的に影響を与えたものがオミットされやすい、ってことだと思います。
この本だと、書かれていないけど、政策って失敗するケースもままあるわけで。
磯田さんも、その辺は文章の中にサラリと書いているからさすがだと思うんですが、
読者の側からすると
「この本の視点は非常に面白いけど、テーマ史に近いのでこれだけでなく、もっと様々な本を読んで、その視点を組み合わせて多層的に見れるようになったら、なおいいかな」とは思いましたね。
歴史っていうと、どうしても私も正史のような骨太なものを欲しがる傾向があり『いっきに学びなおす日本史』を通読したりしてますけど
この本はちょっと「変わり種」として面白いなと。こういう本を読み進めるのも
自分では見落としがちな「歴史に対する先入観」に手を突っ込むのに役に立つな…とは思いました。
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