先週師の記念講演にお邪魔して、向学心に燃えているブログ主です。
未だ衰えることのない先生の探究心にふれ、もっともっと本を読みたい、いや半歩でも先生に近づくためにもっともっと勉強と修行に努めなきゃいけない、という思いを持ち帰って参りました。
そんな想いの中、3日前に購入し、東京に行くときも持っていき、電車の中でもずっと読んでいた一冊…
佐藤優『友情について 僕と豊島昭彦君の44年』を昨日、読了しました。
『友情について』ってどんな本?
高校時代からじつに40年近くの空白期間を経て再会した、著者の高校時代の親友、豊島昭彦さん。
彼のことは、自伝的小説『十五の夏』でもちょっと出てきます。
再会からしばらくして、彼が末期のすい臓ガン(ステージ4)だと判明するところから話が始まります。
もはや末期で手術はできず、化学療法に頼るほかない。それも効果がなくなれば、打つ手はもう、緩和ケアだけです。つまりは、「いかに楽に旅立つか」という方向にしか努力ができなくなるのです。
そんな中、佐藤さんは豊島さんに、「本を書くこと」を勧めます。
最初、私の中には「佐藤さんはなぜ、余命いくばくもない豊島さんに本を書くことを勧めたのか?」という疑問が湧きました。
しかし、この本を読んで気がついたのは、きっと佐藤さんは豊島さんのことが心から大事な人で、もっと彼のことが世の中の人に知って欲しいと強く願っていることでした。
豊島さんの子どもや、将来生まれるかもしれない、顔も分からない彼の孫に
「こんな素晴らしい人間が生きた」というのを残すこと、そして私たち読者にもそれを共有して欲しいという思いが込められているんだと思います。
ご存知の通り、佐藤優さんご本人も大変な仕事を抱える売れっ子作家です。
〆切が80本という月も珍しくない中、豊島さんの仕事を最優先にしてこの本を上梓したそうです。
最近、佐藤さんが毎週金曜日に担当している東京新聞の
「本音のコラム」でも取り上げていることからも(ホント原稿量ギリギリまで書かれていたので、きっと相当推敲したんだろうな、と思います)力の入れ方が凄いと感じました。
内容は、豊島昭彦さんの生い立ち、性格やエピソード、佐藤優さんと再会するまでに歩んだ日々…を丁寧に書いています。
時折、その時佐藤さんご本人はどういうことをしていたかが挿入されていて、すれ違うことなく、長く会うことなかった友達を人生の折々に思い出すような、そういう書き方もしています。
誠実に、粘り強く生きる
学生の時は、努力を重ねて勉励刻苦し一橋大学を卒業した豊島さん。
日本債券信用銀行に就職し、円満な人柄、努力も相まって順調に出世を果たします。
しかしバブルが弾けて勤めていた銀行が経営破綻。
日本債券信用銀行が、あおぞら銀行となり外からやって来た外国人上司の無理解や、転職先のゆうちょ銀行での社風の違いなど、数多くの逆境に立たされます。
しかし誠実で粘り強く相手を知る努力を重ね、しかも決して折れることなく、自分の未来を切り開きます。
そして、たとえ末期ガンに侵されても
「クヨクヨしてガンが無くなるわけではない。一日一日、今を精一杯生きる」
という豊島昭彦さんの生き方は、今仕事をするようになった自分にも様々な学びを与えてくれます。
「親友とは?」と考えた
2人は高校時代の一年ちょっとの交流と、
豊島さんのガン発覚の直前からの付き合いしかありません。
しかしこの本を読むと、2人はまぎれもない「親友」だと思います。
佐藤さんの
親友とは付き合った時間よりも相互理解の深さで測られるものだ(243ページ)
という言葉はとても重い言葉だと思います。
私にも幸い、親友と呼べる存在はおりますが、何年間を開けても会えばすぐに昔通りで付き合える。
なんかあったら彼に相談できるし、こちらもしたし…
お互いを理解し、認め合う存在がいる、というのは、本当にありがたいものです。
この本を読むとよりそれを強く感じました。
それにしても、素晴らしい一冊でした。手元に置いて、折に触れて読み直したいほどです。
私も、時代の波に翻弄されながらも力強く生き抜いた豊島昭彦さんと言う人を1人でも多くの人に知ってほしい。
そして一日一日を精一杯生きている豊島さんを応援するつもりで、この一冊を1人でも多くの人に読んでもらいたい、そう思います。
最後になりますが、豊島昭彦さんの日々が出来るだけ長く、穏やかなものでありますように、と願わずにはいられません。
追記:豊島昭彦さんは2019年6月7日に永眠されました。心から追悼の意を表します。
【関連記事】
最後まで読んでいただきありがとうございます。この記事が面白かったらTwitterリツイートやシェアボタンでの応援よろしくお願いいたします。
コメント