「チャンスの女神は前髪をつかめ!」という言葉があります。
後になってチャンスをとらえようとしてもできないことを例えた言葉ですが、これは本との出会いにおいても同じです。
今朝、通勤途中でコンビニに朝食のおにぎりを買いに行ったとき、一冊の文庫本に手が伸びました。
ちょっと気になってパラパラめくったら、こりゃいいぞと直感。
即レジに並んで購入。
そうしたら、おにぎりを忘れてた。今朝は朝食抜き(苦笑)
読み始めたら、これが本当にすらすら読めるのよ。
すらすら読める理由①~とにかく表現が柔らかい。
感心したのは、「経済史」というとにかくお堅いイメージの分野を
人間は欲望の生物である!というリアルな認識の元でひたすら下世話に経済史をさばいていくとこんなに話が分かりやすいか!!と思ったこと。
昔習った「東インド会社」がどんな会社だったのか?
アメリカが「棍棒外交」でどんなエグいことをしていたのかなど…
言っちゃなんだけど教科書だと中々降りていけない内容を「ゼニ」の視点につなげていくとコレがモノすごく分かりやすくなる。
文章は類書などとは違ってけた外れに砕けてて、著者と編集者の仕事の凄さに舌を巻く。
すらすら読める理由②~プロの予備校講師で知識が正確!
で、また著者の蔭山克秀さんは、代ゼミの公民科講師としての実績もあり、知識の正確性も◎。
予備校というところは、正確な知識を伝えていく場所ですから、さすがの安定感です。
ところで「話がわかりやすい」というのは、結構難しくて、大事なことを省略しちゃったり
そもそも間違っていることも多い。
代表的なのが、オリラジの敦ちゃんがやってる「なんとか大学」
言っておきますけど、私この人の動画を見て最初の5分でデタラメを言い出したので、一本しか見てません。敦ちゃんの話を真に受けて得々と披露したら、ホントにモノを知っている人間に足元を見られます。
初心者は絶対に手を出さない方がいいですよ。入門者は不正確な情報を最初に掴んでしまうと、修正がホント面倒くさい。
その点、この本はかみ砕いていても、ポイントは絶対に外さない。
一つ例を出します。私の得意な場所で、19世紀の「三国干渉」のくだりです。
当時は、列強による植民地獲得競争が激化してきました。人口が多くて、資源豊富、そして弱い中国なんかは世界中から「将来有望な植民地」としてマークされます。
日本は「日清戦争」(1894年~1895年)で勝利し、下関条約で遼東半島や莫大な賠償金を手にした。
これはマズい!欧米列強は思った。このままいくと、地の利で日本に中国をかっさらわれる可能性がある。これを防ぐため、ドイツ、フランス、ロシアは「三国干渉」(1895年)を行い、強引に日本に遼東半島を返還させた。コワモテ3人が肩をいからせながらすごんできたわけだ。「テメェだけの猟場じゃねーんだよ。図に乗るな」
当時の列強が、中国に強い関心を寄せて、隙あらばという態度だったことや
イギリスにはすごめなかった連中も、
当時二流国の日本に対しては、いかに露骨にふるまったかまで、完璧に表現されててすごいなと、感心した次第です。
この本は話のネタに物凄く便利!!
話の分かりやすさ、正確性を兼ね備えた入門書って実は案外多くない。
そして、経済史は現在の経済にも直結する話題なので、知っておくと経済にも強くなるし、
経済の話はイコール国際交流がどのように行われたかということにもなるので、近現代史的な視点も身に付くという、非常にお得な本です。
しかも、中身はしっかりしている割に柔らかいから話のネタにももってこい!
実用性が極めて高い一冊になっているので、経済史の一冊目として本書をお勧めしたいと思います。
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