埼玉県出身の偉人というと、先日一万円札の肖像に選ばれた渋沢栄一が有名です。
しかし、僕の住む町のお隣、久喜市出身の偉人にも本多静六さんという方がおられます。
この人は、今につながる環境問題、都市計画に対しても尽力した「日本における環境問題専門家の元祖」とも言える人物なのです。
本多静六さんはこんな人
本多静六博士(Wikipedia より引用)
本多静六博士は明治〜昭和を生きた日本初の林学博士です。
幕末に貧農の家に生まれ、アルバイトの傍、勉励刻苦の末に東京帝国大学(今の東大)に進学。
さらにドイツに留学し、現東大で林学博士となり教鞭をとりました。
これだけでも充分すごいのですが、
彼は学問を活かして、日比谷公園や神宮の杜の設計を始め、多く公園や造林などの事業にかかわっていたことでも知られています。
例えば青森県野辺地町の野辺地駅。
野辺地はちょうど八甲田山から吹き下ろす季節風と陸奥湾を渡ってくる季節風がぶつかる位置にあるため、風が強く、降雪量が多い土地です。
ここに鉄道を引く際、鉄道運行の最大の敵である雪から『防雪林』で鉄道を守るアイデアを出しました。
また、関越自動車道をご利用になられた方なら『嵐山(らんざん)サービスエリア』の名前をご存知だと思いますが、これも本多氏の命名によるもの。
彼がこの辺りを見て回った時、
京都の嵐山(あらしやま)に似た美しい地形だったこの地を、
鉄道の便が整ったら、観光地として売り出すのにいいんじゃないか、ということで『武蔵嵐山(むさしらんざん)』と名付けたものです。
また、当時は近代化の負の遺産として、山林が乱伐されたりしてハゲ山が増えたりしました。
また、足尾銅山の鉱毒事件などで破壊された環境をいかにして回復させるかなど、
環境問題が次々と起きた時期とも重なります。
そのような問題にも、精力的に取り組んだ「環境問題専門家」の元祖ともいえます。
『4分の1貯金』
彼は教授としての「本業」の他、上記の専門を活かした副業や、今でいう自己啓発本の執筆、講演活動も熱心に行いました。
そして生前からもう一つ、氏の名声を高めたのはその蓄財術。
生い立ちのご苦労が多かった経験から、
またドイツ留学の際に、師であるブレンターノ教授から「経済的な独立を確立することの重要性」を説かれたことから始まったと、著書で語っています。
そしてその基本は『天引き貯金』。
毎月の給料の4分の1、臨時収入(アルバイト、ボーナス等)全額を天引きして貯金するというシンプルなものです。
そうして少しずつ貯めたお金を山林や鉄道株といった当時有望だった投資に回し、サラリーマンながら大富豪になりました。
生涯現役を生涯実践
さらに尊敬に値するのは
そうやって築き上げた財産を守るのではなく、退官を機にポン!と寄付したこと(しかも匿名で)。
その一部が埼玉県の奨学金制度の基礎となったそうです。
つまり、かつての自分のように「志ある者に道を拓く」ために、自分の財産を使って欲しい、と行動したわけです。
そして自身はその後も「仕事を道楽」と位置づけ、生涯現役を貫きました。
彼はそういった蓄財の過程などから身に付けた考え方を『私の財産告白』という本で披露しています。
この本自体、もともと昭和25年に出版されたものです。
本多氏自身、明治~太平洋戦争直後に活躍した人物なので、彼が披瀝する投資話は正直余り参考にはなりません。
しかし、それでもこの本は面白いです。
それはどんな時代にもある『お金の問題』をてらいを持たず隠すことなく書き、読む人全てに役に立つ哲学に仕上がっているからです。
無人島にでも住んでいない限り、私たちはお金という存在に付き合って、時に悩まされたりしなくてはなりません。
それだけ重要な存在なのに『お金=悪』のイメージで片付けてしまうところもあります。
そんな中、本多静六さんはお金を毛嫌いし、目をつぶるのではなく、その問題にま正面から向き合い、たゆまぬ努力で解決する事ができると説きました。
そして、
「お金とは労働の残りカスであり、労働にキチンと向き合い、喜びを感じるほどに深く追求することが人生を豊かに生きる源泉となる」
ということも述べています。
今、「超高齢社会」と呼ばれる時代を迎え、やれ年金給付年齢が上がるだの、その年金は払い損になるかもだのと申します。
しかし、晩年まで精力的に働いた本多博士の姿を見れば、僕らも真の幸福とは、元気に日々の仕事に精を出し、「いつまでも世の中の役に立てる」という確信ではないでしょうか。
自身の体験に基づいた金銭哲学は別に財産家になりたくなくても本当に役に立つと思われるのでぜひ、実際に手にとって読んでいただければと思います。
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