この記事では、同じネタを違う本から読む面白さを紹介したいと思います。
本というのは、著者の視点でものを見るのはやむを得ないことで、
採録されない事実もあります。
しかし、ここまで極端な例というのは中々ないので、ちょっと古いですが2冊の本を紹介し、物事の裏側を除いて楽しもう、という
読み方をちょっとご紹介しましょう。
『笑う食卓ー面白南極料理人』〜食欲特化の南極の食料事情が面白い!
まずは映画『南極料理人』のモデルにもなった、西村淳さん。
この本は南極観測隊の皆様に付き添い、料理その他を担当した著者が
当時隊員たちに作った料理をユーモア交じりに書いてある一冊です。
なんたって、南極ですから。
最低マイナス80度の雪しかない世界。
作業もキツイし憂さを晴らす盛り場も、麗しい女性たちもいない南極で唯一の楽しみは「食べる」こと。
気温が低いから体温を維持するために身体もカロリーを欲します。
だから食欲がものすごい。
当然積み込んだ食料質量ともに超豪華。
お米、もち、うどん、そば、ラーメンと言った主食から
アワビやイセエビ、干しナマコなんて超高級食材まで積むのだとか。
どれだけ欲望のはけ口を食に特化しているかが分かろうと言うものです。
一度上陸すると外からの食料追加も出来ないので、
限られた材料でどれだけバラエティを作れるかという状況をユーモラスに書いています。
ラーメンを自作し、チャーハンもどきを作る!
例えば、このときは麺食いがことのほか多かったらしく、持って言ったうどん、そば、ラーメン…を全て使い尽くした話。
著者もあれこれ試したようですがラーメンの麺の風味をだす、カンスイが南極にない。
とある隊員が自身の化学の知識をひねり出し『成分を考えたら、ベーキングパウダー+食塩で代用できないか』と考えて試行錯誤して中華麺が出来上がったとか。
人から言わせると「才能の無駄遣い」かも知れませんが、「必要は発明の母」ともいうかも知れませんな。
また、チャーハン。
作り方を思い出して欲しいけど、あれは一度にたくさん作れない。人数分作っても猛烈な食欲で食べられるので追いつかないそう
だけど、
とある人物の「チャーハンとピラフって何が違うの?」という発言から
チャーハンもどきのピラフを著者がひらめく話とか、
面白くも思わず腹が減ってしまうネタが満載です。
証拠写真だらけの千ミツ本『不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス』
そして、この西村さんが参加した観測隊の中で、第38次隊に2ヶ月同行したのが
ご存知、宮嶋茂樹氏。不肖・宮嶋です。
実は先述の「チャーハンピラフ」は宮嶋さんの一言がキッカケ。
そして、彼は帰国後に隊員を激怒させる本を書きます(実は文面は故・勝谷誠彦氏)。
コレが『不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス』です。
感想はただひとつ、ムチャクチャ。
不肖・宮嶋の隠れミッションがバカバカしい
彼が2ヶ月の南極観測隊の同行において命じられた隠れミッションは
「南極で南極二号と記念撮影」という超くだらねーもの。
南極二号、というのは今で言うラブドールですな。
その昔、隊員が当地での無聊を慰めるため、ラブドールを持ち込んだというウソのようなエピソードからその名が生まれた「南極二号」
ビニール製で、空気を集めて膨らませる
南極二号もとい「スチュワーデス麻衣ちゃん」を同行?させる不肖宮嶋!
観測雪上車の上に
あられもない格好で麻衣ちゃんを晒し者?にし、
基地で熱い抱擁を交わす不肖宮嶋!
私、本を読みながら笑いをかみ殺すのに必死
「バカだ〜!バカがいるぞ〜!!」ってゲラゲラ笑いたかったが
満員電車だったので、泣く泣く?諦めた次第。
奇人変人だらけの観測隊?写真がミョーな説得力
あと人を極端に書くとここまでいくかってくらい、
デフォルメされた人間模様は、書かれた当の関係者以外は抱腹絶倒間違いなし。
中国から来た交換技術者(ちゃんと仕事をしてます)をスパイ呼ばわりし
同行した医師をマッドドクター兼「トウカモ(後述)」に仕立てる!
そりゃ、怒るでしょ。
どう考えても。
基地や雪上車など、あちこちに女性の写真やイラストばかりなのは白一色の南極に少しでも色気を得たいという、無聊を慰めるためと一応理解できるとして、
南極に行くと人間、神経のどっかがちょっと変わってしまうのか、激烈な寒さが人間の常識を凍結させてしまうのか…
また観測隊隊員の髪型がすごい。
スキンヘッドはかわいい方で
モヒカン(ソフトじゃない、ハードなやつ)、
大五郎カット
山海塾カットと
宮嶋氏の写真にはありえない髪型がワンサと出てくる。
世界で一番かっとんだ髪型を実践しているのは日本の南極観測隊じゃないかと思うくらい、
超個性的。
コレは証拠写真がワンサカ収録されているから、ウソじゃねーよな。
「トウカモ」と「シャンプーでトリップ」
あと面白いのは「トウカモ」。他の鳥の獲物をかっさらう「トウゾクカモメ」からその名が由来する(というか、本書以外でみたことないが)用語。
到着した隊と入れ替わりで帰国する前隊の帰り道に同行する途中、
南極のあちこちに「デポ」されてる物資を目をギラギラさせながらガメていく帰国隊。
己を往時の遊牧民族になぞらえて「掠奪ほどハマるものはない!」と豪語する。
あとは「シャンプーでトリップ」。
何気なくジャンプーを嗅いだら
アレやこれやのシャバの雰囲気を思い出してコーフン状態に陥る宮嶋氏ほか、観測隊の方々。
…んで、みんなでシャンプーの香りをクンスカ嗅いでしばし陶然するという…
とにかく、事実より面白く!という過剰なサービス精神が爆発してるのが本書であると言えましょう。
とにかく、同じ話をもとにしながら
ここまでテイストが変わってしまう、という典型でぜひ、2冊をまとめ買いして読んでみることをお勧めします。
1冊だけ読むより3倍楽しめることは保証いたします!
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