亡き人偲びを短い尺で人生を描き出す「評伝」は心のこもった文章を練習するのに最適な件

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最近、大好きな芸能人や優れた人が次々にお亡くなりになるようになりました。

この一年でも、野村克也さん、志村けんさん…

亡くなられた方の生前の姿を思い描くたびに、私は深い無常観を覚えます。

そして、こういった有名人、著名人が亡くなると、

亡き人を偲び、新聞には「評伝」が掲載されることが多い。

この評伝が、実は文章力を鍛えるのに、メチャクチャに役に立つというお話をしたいと思います。

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実例:八千草薫さんの評伝

2019年10月29日の読売新聞朝刊に掲載されていた

名女優、八千草薫さんの評伝を例にとりましょう。

「評伝」はその人物を、

その人の生き様が伝わるような仕事や人柄、エピソードを折り込み、

その人の生涯を一つのテーマにまとめなければなりません。

ですから、記者の中でも比較的本人を良く知る人物が数多いエピソードの中からもっとも印象的なものを選んで、書き進めていくことになります。

八千草さんの場合、舞台の稽古場での取材風景から文章が始まります。

ほほ笑むだけで周りが華やかになる、という優しげな人柄と演技への情熱、美しい音楽に魅せられての宝塚入団。

その後の女優への転身、

その上品でおっとりとした、「良妻賢母」のイメージのあった彼女が、

テレビドラマ「岸辺のアルバム」では不倫に走る主婦という、これまでのイメージをぶっ壊すような役にも挑んだこと。

最後は自然に演じることへの彼女の信念にふれ、

最後の舞台「黄昏」での演技に彼女の素の姿を重ね合わせる。

500字前後で彼女の人生を切り取ってみせる文章で、

コレを読むとどんな人となりかが分かる、というわけです。

字数が短いと簡単と思う人がいるかもしれませんが、むしろ評伝の場合、どのエピソードでその人の生涯を際立たせるかが、大きくカギを握ります。

まして、誰もが知る人物を伝える際には選ぶエピソードでその展開が大きく変わるわけです。

だから、短い文章の方が、より力量がハッキリ出ると私は考えています。

評伝をノートに写す

このように、評伝の場合は故人を知る人物が、

その人の魅力を凝縮し、かつどれだけ活躍したのかを簡潔に書くことに重きが置かれています。

これだけ読み応えのある文章ですから、ただ読み捨てるだけではもったいない。

私はこういう文章に出くわすと、自分の筆写ノートに書き写すようにしています。

ノートは横書きですから、縦書きの新聞記事を横書きで写していきます。人によってはノートの角度を変えて、罫が縦書きになるようにして書くのもいいでしょう。

筆写は、書いた人の筆遣いが句読点の使い方や言葉の選び方を写しながら味わっていくのがポイントといえばポイントです。

ちなみにこの時、評伝は1時間ほどで写し終えました。

好きな人物の評伝には、様々な思いが乗るので面白い

この書き写すという行為は

熟読よりもさらに時間がかかりますが、自分の読解力、ひいては文章力を練るのにはかなり有効で、

私も学生時代にこのトレーニングを積むことで国語の勉強はほとんど授業だけですませてました。

こういった、練られた文章を「書き写す」と、自然に文章のリズムや言葉遣い、読んでて不自然にならない文章のセンスが書き写す人間に移るからだと思います。

もしその人物が貴方にとってとても印象深い人物であるならば、きっとただ、文章を書きうつすのとは全然違う感覚を覚えるかもしれません。

出演作品や、その役柄など「自分の記憶」も思い浮かべながら、

別の人が切り取った評伝を読むのは、

「上手い切り取り方をするな」とか「コレは知らなかった!」といった発見や驚きもあり、

結構楽しいものなのです。

書き溜めていくと、読み返すのが楽しい

私なんかは、折あるごとに、面白かった記事や印象深い本の一節をノートに取るようにしています。この評伝などもそうですが、これを常に習慣にしておくと、

文章を書く時にそんなに言葉選びに悩むこともないし、

なにより、読む力が維持されます。

後で読み返して、楽しむこともできます。何年後かに読み返したりしますと

結構考える内容が深みを増したり、新たな着想がえられたりと私の中ではかなり重要だったトレーニングだったりするんです。

必要なのは新聞とノート、筆記具のみというお手軽さもポイントです。

ぜひ、お試しあれ!

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