バブルに縁遠い令和の時代に「昭和の相場師」の小説を読む

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先日、ふと思い出して城山三郎さんの小説『百戦百勝』を読んでみました。

城山三郎『百戦百勝』1979年刊

この本、確か高校の図書室にあったのを読んだのが最初だったんですよね。

それが突然、私の脳みそに「そういえば、あの本を読んだな」と思い出し、わが自宅をゴソゴソ漁ってみたら、あった。

そんなわけで、2日くらいかけて読み通してみた次第です。

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百戦百勝とはどんな小説か?

本作は、経済小説の元祖といわれる城山三郎氏が執筆した新聞連載小説です。

舞台は大正時代…

主人公、春山豆二は貧農の生まれで、父親の知り合い、増富三六という男が、目もくらむ大金を振りまいて豪遊する姿を見て、自分もいつかは、一攫千金を狙いたいと思うようになります。

そして、コメ問屋に丁稚で入り、コメに対する知識や投資の思考を耳学問で吸収し、

そこから転じて米相場にお金を投じるようになる。

戦前あった米相場では、しばしば風雲児や妖怪と呼ばれる人間が、相場を吊り上げて一攫千金を狙おうという人物が現れ、

またそのオコボレにあずかろうと、三六のような者たちがウロウロしてる魑魅魍魎の巷みたいなところ

そんな中で、強引に買い上がるパワープレーではなく、あくまでソロバンに徹し、確実に勝ちをおさめる豆二は、相場での大物としてのし上がってくる、という物語です。

1979年に文庫化された小説だそうで、40年以上前の作品です。

ギラギラした相場の熱狂ぶりがスッゲーいきいき描いてある!!

まぁ、そんなちょっと忘れかけられている小説なんですが

相場の熱気に当てられてギラギラしている人々の雰囲気が、実に生き生きと描かれています。

もうみんな、米相場が上がった上がった!と目先の数字に一喜一憂。この辺なんかは子どもの頃にちょっと経験したバブルの雰囲気に似ているなと。

ただ、数字を追っかけているだけの人って、欲望に振り回されて結局大やけど状態になってしまう

主人公は、というと元々が「コメの飯を食いたい」という欲求から始まったスタートだったので、投資対象の米をじっくり研究するところから始める。

そして、目先の高騰に熱狂している人々を尻目に、

全国の米の作柄や貯蔵されている古米などを丹念に調べ上げ、冷静に売り買いを重ねながら、「最終的な勝ち」を狙いにいくのが

実に面白いと思います。

投資対象をよく知ることって、ウォーレン・バフェットなんかも言っていることですが、コメの場合は毎年毎年作柄は変わるし、

かなりスパンが短いよなぁ、と。

現在米相場は日本ではないけれど、そういう作物の先物取引で起きる、栄枯盛衰、悲喜こもごもというのは中々味わい深いものだと思います。

ザ・昭和な男の甲斐性…は、今ならアウト…だろうな

今の時代じゃ死語だけど「英雄色を好む」のたとえ通りで

主人公の豆二は、結構浮気する。奥さんは川上貞奴(明治期に活躍した女優)ばりの美人…なのに、ねぇ。

川上貞奴さん。キレイですねぇ

で、この奥さま、ド天然みたいだけど、時折突拍子もないオネダリをする。

「あなたの田舎のそばに橋を架けてほしい」とか「十万坪の土地に梅を植えて、歳を取ったら一緒に暮しましょう」とか。

そして、旦那の浮気を知ってるんだか、知らないんだかみたいな態度を取りつつも

夫をしっかりサポートする、という…なんか昭和の男の理想の女性像ってこんな感じなんだろうか、と思ったりして。

今、この作品を発表したら、Twitterでフェミニズム活動している人たちが、

「女性蔑視だー」と大騒ぎするだろうなと。

まぁ、ブログ主と同じくらいの作品なんで、あんまり怒らないで欲しいなと。でも、今はダメだよな…濡れ場はなくてサラリと書いてあるだけなんだけど(´・ω・`)。

それでも、この本は面白い!!

まぁ、色々書いてきたけど、

44歳になって読みなおしてみると、裏書きにある「痛快」であるかどうかは別として

面白いですよ。特に相場に熱狂してる人たちの鼻息まで聞こえて来そうなギラギラ感は。

何しろ、社会人になってこの方、好景気とは縁のない時代に生きておりますし(苦笑)

この手のギラギラ感には縁遠いし、巻き込まれるのは遠慮こうむるけど。読むだけなら本代だけだしね。

私も投資が好きですから。iDeCoや金をいじっていると、「世の中どうかわるんだろうな~」って興味が湧いてくるし。

それでも、長く生きてりゃ、一回くらいこんな風に日本中が欲でギラギラしてる時が来るかも分からん。

そんな時に、豆二みたいに冷静にソロバンをはじいて、生き残る人生を演じてみたいものですな。

最後まで読んでいただきありがとうございます。この記事が面白かったらTwitterリツイートやシェアボタンでの応援よろしくお願いいたします。

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