浦沢直樹の傑作『MASTERキートン』をぜひ読んでみて!?

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Twitterで何気なく「浦沢直樹のMASTERキートン面白いよ!」とつぶやいたら

若い方から「それ、何ですか?」との返信が来ました。

教えたら興味を持ってくれたみたいで「ぜひ読んでみます」とのお話。なもんで、このマンガをちょっと紹介します。

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主人公は学者で元軍人、保険会社の調査員

主人公は、平賀=キートン・太一(以下キートン)という人で、オックスフォードで考古学を学び

そこから「なぜか」軍に志願、SASという特殊部隊でサバイバルスキルを学び

現在は大学の非常勤講師をしながら、ロイズのオプ(保険調査員)をするという、不思議な人物です。

基本1話か2話完結で、どの巻をとっても読み始められるのが魅力です(最終巻をのぞく)。

保険の調査員の時はサスペンス仕立てで、元SASの能力を活かしながら難局を乗り切ったり、学問の話では、自分のライフワーク「ドナウ文明」の証拠を探し出そうとする話が多いです。

こう書くと、ものすごく学術的なゴ〇ゴ13のイメージを持たれるかもですが、決してそんなことはなく、キートン自身は温和で優しい性格。何より人生を楽しく生きようという心があふれています。

物事を解決するほのぼの展開も多いのがこの作品の面白いところです。

今読んでも古くない、連載当時のヨーロッパの背景

今回、この記事を書くに当たって久しぶりに読んでみたのですが、

今読んでも、おーっとなる描写が随所にあります。特にヨーロッパの根っこにある複雑な歴史背景なんかは、EUの統合イメージしかない若い方には、ちょっとびっくりする内容があるかもしれません。

例えば、イギリスとアイルランドの関係なんかは、今は小康状態になりましたが、かつては北アイルランド紛争でIRAというテロ組織とイギリス軍がバッチバチにやりあった経緯があります。

MASTERキートンの時代はそのバッチバチがくすぶっていた時代。「偽りの三色旗」「偽りのユニオンジャック」の前後編として今と違う物騒な雰囲気で、当時の雰囲気を描写しています。

また、西ドイツで成功を収めたトルコ人実業家を、民族主義の殺し屋たちが襲う「黒い森」というエピソードでは、今EUで起こっている移民に対する問題がいかに根深いかを理解することが出来ます。

現在は表向き一つのように見えるEUも、一皮めくればこういった経緯を一時ごまかしてまとまっていると思うと非常に興味深いものがあります。

ほのぼの家族エピソードがホント、いい

一方で、キートンは学生結婚した奥さん(これが最後まで登場しない)との間に娘の百合子をもうけたものの、離婚。

同じくキートンの母親と離婚した父、太平が登場する家族のエピソードがちょくちょく出てきます。

こういったときでも、神話や歴史のウンチクをはさみながらホノボノとした展開で、普段の緊迫したシナリオとはまた違う、緩やかでユーモラスな展開もまた魅力。

おススメは、キートンがお袋の味を再現する「遥かなるサマープティング」。味の決め手のミントが枯れかかっていると知ったキートンが、急に本気を出す話が面白いです。

キートンファンなら絶対知ってる、サバイバルエピソード!

この作品に親しんだ人なら、必ず知っているのが

「砂漠ではスーツが適している」という話。これはネットの記事で実際に検証しちゃった人がいるくらい。この記事もメチャクチャ面白いので、ぜひ読んでみて!!

社会人になっても勉強を続けるきっかけに

個人的にとても思い入れが深いのが、キートンがパリの社会人学校で教鞭をとる「屋根の下の巴里」。

私、このブログで年も隠さず勉強ネタを書き続けていますが、いつまでも勉強を続けようと決心したのは、このエピソードのキートンの言葉に感銘を受けたからです。

社会人学校が再開発計画で閉校となるとき、授業のトリをとったキートンは

社会人受講生たちに語り掛けます。

最後に皆さんに聞いていただきたいことがあります。それは…

たとえ学校が無くなっても皆さんに学び続けて欲しいということです。

実は私も学問を追求する者として自信を失いかけていました…しかしここで、皆さんと共に過ごすうちに、気がついたのです。

たとえ学校の職を失っても、勉強を続けていきたい!学ぶ情熱がある限り…

屋根の下の巴里より

当時大学生でしたが、もう1年後には社会人になる道は決まっていましたし、そうすると(仕事以外の)勉強は「上がり」になります。

ただ、このエピソードを読んで、なぜか私は「社会人になっても自分の勉強を続けよう」と決心し、今日に至っております。

こんないい作品が…実は長年再版できなかった!

とまぁ、私に学ぶことの面白さやすばらしさを深く刻みこんだ本作なんですが、これが原作者の権利関係で一時再版されなくなりました。

それも原作者ではなく『美味しんぼ』の原作で知られる雁屋哲氏のいちゃもんで。

そんなわけで浦沢直樹さんの作品はヒット作が多く、彼の作品をフォーカスしたムックが出た時も、作品の内容をほとんど紹介できないという冬の時代がありました。

それが分かってるから、もってる人も売りに出さず、一時は読みたくても読めない「幻の作品」扱いになってしまったのです。

ホント、恨むぞ、このクソジジイ!!

…しかし、その関係も何とか解決し、2011年にカラーページを完全再現した『MASTERキートン完全版』が発行!

ホントこの時は嬉しかったなぁ…

なお、この作品映像化もされていて、すごーく出来がいいので、そちらもぜひ見てみてくだされ!!

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