この記事では、元山口組の経済ヤクザだった猫組長の『金融ダークサイド』を紹介します。
この本は、元日産会長のカルロス・ゴーン事件の解説や国際経済の内幕、仮想通貨、AIの未来などを著者の歩んできた視点から書ききった一冊です。
テレビや新聞の解説ではよく分からなかった、という方におすすめします。
猫組長とはこんな人物
猫組長は、カタギから反社会勢力に入り、一時は数百億を動かしていた、元経済ヤクザです。
立場上素性不明の様々なお金を扱い、反社が用いる『裏の手』を熟知した彼がその名を轟かせたのは、カルロス・ゴーン事件の時。
日本人には馴染みの薄いケースだったこの事件を独自の視点から明快に解説、注目を集めました。
最初は匿名、顔出し不可の「謎の人物」でしたが現在は、かつてのキャリアから、主に経済的な問題や時事問題を取り上げた著作を積極的に世に送り出しています。
『金融ダークサイド』はこんな本
そんな猫組長が昨年7月に出版したのがこの本。
今はレバノンに海外逃亡したカルロス・ゴーン事件がまだよく分かっていなかったこともあり、著作の前半はこの事件に当てられています。
特に私が興味深く読んだのは、ゴーン事件が単なる特別背任ではなく、マネーロンダリング(資金洗浄)が話の核心との読みをしているところ。
その理由を一つ一つ、丁寧に説明してあります。ただ、私は金融については素人ですから、理解できるまで時間はかかりましたが。
マネーロンダリング解説が面白すぎる
最初、私はゴーン事件をよく分かりたいと思ってこの本を手に取ったのですが、一番ハマったのはマネーロンダリングでした。
名前はなんとなく知っていましたが、このマネロン解説がとても面白い。
私はマネーロンダリングなんて多分一生しないですが、「知りたがり」の私には興味津々だったのです。
大量の現金を移動させることは、時に苦痛を伴う作業となる。何より資産は保管しておくだけでは、ただの置物に過ぎない。使えるようになって初めて価値を持つということで、裏に蓄財した現金を表に出せるようにする必要がある。そうすれば表の経済活動への投資も可能となる。(132ページ)
お金はかさばるし、使わなきゃ意味がない。
それを使えるようにあの手この手で「洗う」方法が、マネーロンダリング。そしてそれは常にアップデートを繰り返す秘術であると言います。
この言葉の語源となったアル・カポネの「洗濯屋」経営から、マフィア界の切れ者、メイヤー・ランスキーが確立したマネロンの方法論など、その手段は日進月歩。
そして、現在は表の投資銀行の手段を裏返したものである、というのが大変興味深く読めました。
イズムゼロの徹底したリアリズムが魅力
猫組長の著作はみなそうですが、事実を捉える視点が透徹してて、怖いほど本質を見抜く目が魅力です。
そこには金と暴力という、とてつもなくおっかない「裏のリアル」が満ちています。
日本の報道はともすると、綺麗事や理念=イズムに引っ張られて事実をとらえ損ねるものが多いです。「知りたがり」の私としては、そんな報道にウンザリしていました。
彼が、妖刀村正のように様々な事象を解説して読者を捉えているのは、私のように感じる人間が少なからずいる、ということだと思います。
追記:猫組長・西原理恵子『ネコノミクス宣言完全版』も読みました。
緩いけどヤバい西原理恵子さんのマンガと、シャレにならない猫組長の組み合わせはクセになります。
詳しくはこちらから
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