プロって壮絶~鎮勝也「君は山口高志を見たか」を読む

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先週の通勤時間は、久しぶりにプロ野球の本を読みましたね。

それも、私が生まれたころの伝説の剛速球投手、山口高志さんのノンフィクションです。

私、野球そのものを見なくなっても「野球をする人」には割と興味がありましてね。

名だたるプロ野球OBが「一番ボールの速かった」と口にする、山口高志さんってすごく興味がありました。

実働5年という短い選手生活にまっすぐ一本で勝負し、華々しく散ったという話から

どんだけ豪快なのかなぁ?と。

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頑固一徹じゃない!リアル山口さんが、堅実で柔軟

ところが、読み始めてみてこの山口さん、メチャクチャ好人物で、かつすごく自分のことが見えていることにビックリ。

彼は身長169センチという、投手としてはメチャクチャ小柄な体格で、自分の体格じゃプロは…と最初はためらっていたりして

入団しても、まっすぐだけじゃダメだと

変化球を覚えてバランスのいいピッチングを試すものの

「まっすぐが一番いいんだから、まっすぐ放らんかい!?」というプロの先輩のアドバイスを受けたから、それならやろう!と言われて、あの剛速球伝説になったという。

また、生活でも豪快さよりも堅実で、プロ入りした阪急からは「会社員と同様に60歳まで、面倒みる」ということを条件に入れていたり

現役時代もあるだけ使うなんて金遣いでもないし、

プロ入り後に結婚した奥さんからお小遣いをもらい、電車で通勤するという。

後に活躍するコーチでは、自説を押し付けるんじゃなく、まず選手をよく見て、教えられる側が受け入れられるかまで充分見極め

人に対してちゃんと面倒を見続ける

責任感のある「堅実で、柔軟な」人物だったことにまずびっくり。

本格派→技巧派が超一流、なのは認めるけれど…

ところでウチの父親は、団塊世代の野球好きで

「超一流選手は最初、力のある球で勝負していても、力が衰えた時に技巧派にモデルチェンジするものだ」という

まぁ、一般的な「息の長い」投手が至高!という、そういう話を子どもの私によくしてました。

山口高志さんのチームメイトだと、サブマリン投法で多くの勝ち星を挙げた山田久志投手みたいな…

まぁ今考えてもオヤジのいう事はある一面を言い当てているとは思うんです。

ただ、モデルチェンジをして、結果が出なきゃどうしようもない。

「それを恐れないのがうだうだ…」とオヤジなら言うだろうけど、モデルチェンジしたからって、その人に手加減するようなプロじゃないわけでしょ?

要は、中途半端なピッチャーになったら、とても「プロとして売り物にならない」わけです。

元々、体格が抜群に優れているわけでもない山口さんが、全身をハードに使う投げ方で

選手寿命が短くなるよ、と言われても剛速球という武器にこだわったのは、

これまたウチのオヤジが好きだった「選択と集中」に通じるものがあるな、と。

「一瞬でも輝ければいい」という東尾修さんの言葉に、プロの厳しさを思い知る

剛速球一本鎗、体がもたなくなったらキッパリ退く。

プロの世界で細く長ーく生きる、そんな考えの私には、なんともったいないと思っていたのですが、

この本の中で同時代、弱小チームだった太平洋クラブライオンズで頭角を現し、常勝西武でも投げ続けた東尾修さんは

「プロの人生は長さではない」ときっぱり言い切ります。

「プロの世界では、一瞬でも輝ければいいんだ」と。

考えてみれば、毎年ドラフトで有望新人が入団し、それと同じくらいの数の人が、プロの世界を去る。

その中には、勝ち星どころか、一軍のマウンドに立つこともなく、ひっそりとユニフォームを脱ぐ人もいる。

そう考えると、実働5年という選手生命の中で、自分の持てる力を爆発させて

数多くの強打者に「速い!」というインパクトを強烈に残した

「山口高志」という一人の選手人生は

オヤジのいう「超一流」の定義からは外れるけれど、

プロとしての美しさはあるんじゃないかなぁ…そして、プロってメチャクチャ厳しいな、としみじみ感じる次第です。

【参考図書】

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