今、何かと世間の方からの逆風が強い新聞業界。僕はそんな左前な世界に身を投じて20年になります。
新聞にもいろいろありまして、いわゆる朝日、読売、毎日、産経といった大手紙から「日本農業新聞」のような業界紙、スポーツ新聞や夕刊紙など、多種多様です。
最近では割にマトモな仕事と認知されていますが(そうでないとおっしゃる方がいるのも承知しております)、
大手紙も昔は「年中シクシク泣く嫁の話とか、どこそこに猛獣現る、とかのおそらく知っても『話のネタ以上には決して役に立たない』内容のレベルの記事」を書いていました。
広く読者を獲得するために、ウケる記事を書く!
まぁ、今でこそマジメな内容にシフトしたものの、当初は「東スポ」みたいなのもあったんです。
「19世紀の東スポ」絵入り新聞
イギリスのヴィクトリア女王が君臨していた19世紀後半にも、東スポみたいに猟奇事件や世界の不思議な出来事などを絵入りで伝える新聞がありました。
これを片手にジンをあおり呑んだくれるのが当時の労働者の憂さ晴らしでした。
今の私が居酒屋でハイボール片手にYouTubeでお笑い見るようなもんですね。
内容は当然ですが、政治・経済一切なし。
スキャンダラスな事件や幽霊の話、動物ネタなど、今のバラエティ番組の内容がてんこ盛りでした(切り裂きジャック事件などもこの時代でした)。
こういった記事を集めたものが、仁賀克雄さんの「ヴィクトリア朝珍事件簿」です。
とにかく記事を盛り上げるためには面白いイラストが必須(文盲もいたし)と言うわけではでな見出しとともに、ゴーカイなイラストがてんこ盛りです。
中でも、私のお気に入りは、コレ!
エクストリーム殺人事件
異常な妻殺し…ってコレ、剣が頭を突き抜けております(笑)。頭骨って結構硬いのに…
リアリティからは外れているかもですが、なんつーかこういうのが色々出てきます。
文章も、昔の「川口浩探検隊」のナレーションみたいな、「ジャーン!」という音付きで書かれそうな大仰な表現を散りばめてあります。
上のイラストに添えられた記事には
犯罪の匂いを素早く嗅ぎつけ、恐ろしい行為の一部始終に聞き耳をたてる、いまわしい病的な好奇心は大衆をとらえ、その効果は月曜の朝に現れた。市役所は妻殺しのスイート(犯人)の裁判を見ようとする人間で息もつけぬほどの混乱ぶりだった(38ページ)
となんか、大衆のいやらしさを報じていますが、僕から見ると
「恐ろしい行為の一部始終」をつらつら書き立てて、「いまわしい病的な好奇心」全開で報じているのだから、大衆も新聞も「どっちもどっち」という気がします笑
いつの時代も鉄板!動物モノ
テレビでも和ませるネタとして鉄板なのは、「動物モノ」と相場は決まっています。
この新聞もご多分にもれず、こんな記事を発見しました。
ベルリンでゴリラが死んだ、と一行でも終わることを、元気だった頃や弱くなっていく過程、最期へと思わず涙も下る名文?で書かれてています。
記事は…
飼育主任はいちどならず愛するメス・ゴリラの前にかがみこむと、ゴリラは腕を伸ばして彼の首を抱き、その澄んだ眼でやさしい保護者をじっと見つめていた。わすかのあいだに三度も彼にキッスをした。それからそっと長椅子にもたれ、もういちど彼と握手をした。まるで長いあいだ幸せな生活が送れたことへのお礼のように。ゴリラはすぐにねむりにつき、二度とふたたび目覚めなかった。
と締めくくっています。
いい話だなぁ…ロンドンで当時この新聞を読んでた人も、この記事読んでオイオイ泣いてたのだろうか?…ジン片手に。
やっぱり定番!「怪物あらわる!」
「ネッシーついに生け捕り」みたいな記事が飛び出すのが現代の東スポなら、
誰かが描いた落書き、真偽不明な談話から話をドンドン膨らませるのは19世紀の絵入り新聞。
象やライオン、大蛇…といった具体的な動物だけでなく、謎の怪物も登場。
これなんかは、ベイルート大使館員からの談話とされているもので、
海で海綿(スポンジ)採りをしていたダイバーを丸のみするバケモンが現れて、
ビビったダイバーは仕事に行かず、海綿の収穫量が激減と書いています。
しかし、この化け物何者でしょうか?
え、私目当てじゃない?
寝室に侵入してベッドの下に隠れていた男に、未亡人がピストル突きつけてます。
実は彼は、未亡人でなく女中にぞっこんほれ込んだ男性だと判明。
その後、彼は無事釈放されたのですが、とばっちりを受けたのは女中。
未亡人は、女中を解雇することでけりをつけた。
もちろん、この男がまた忍び込まないようにということでしょう…
まさか闖入者が自分目当てでなかったから…というわけではないよね?と妙な気分になりまする。
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