野次馬根性をくすぐられる『ヤバい本』の数々が面白い

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読書ガイドって、これまで数限りなく出版されてきたと思う。

しかし、佐藤優『危ない読書』ほど、きわどい本を集めた一冊もそうはないでしょう。

佐藤優『危ない読書』

佐藤優『危ない読書』SB新書

先日、書店でお目当ての本を見つけられず、佐藤優さんの読書ガイドを2冊見つけたのですが、

「こっちの方が絶対面白そう」と選んで購入したものです。読んでみると、これが期待にたがわぬ面白さでした。

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ヒトラーの読書習慣とサイバーカスケード

この本の最大のポイントは「こんな本、誰が紹介する?」的な選書にあります。

トップバッターがアドルフ・ヒトラーの『我が闘争』であることからもそれは分かります。

これらの本が、単なる悪趣味からでなく、現代の私たちの未来に横たわる危険な可能性を読み解くヒントになることを示しているのが非常に興味深いです。

例えば、ヒトラーの読書習慣が偏っている点を『ヒトラーの秘密図書館』から指摘し、それが決して現代人と無縁ではないことを

サイバーカスケード現象(同じ考えや思想を持つ人々がインターネット上で強力に結びつくことで、異なる意見を一切排除した、閉鎖的で過激なコミュニティを形成する現象)を例にとり、説明するところは結構考えさせられるところです。

レーニン主義とカルト的企業

同書はまた、スターリンの『レーニン主義の基礎』を読み解きながら、現代日本にはびこるカルト企業との共通点をあぶりだすところが好きです。

私読んだことないのですが、解説が実に秀逸です。一言でいえば本を読まない人にも読める「マニュアル」です。

「ソ連はこういう社会を作りますよ(だからお前ら従えよ)」というのを自己啓発本のようにポイントにゴシック体(太字)を用いて

ポイントだけを拾い読みできるという、普段本を取らない人でも読めるように工夫されていることです。

そして…あらかじめタブーを外側からガッチガチに固めておいて、人間をコントロールする手法は決して過去の手法ではなく、日本の企業でも実例があるぞ、と挙げていきます。

過激派リーダーの読書法が「超役に立つ」

このように、その本がどんな本であろうが、その本から自分の思考に資するものを吸い上げ

薬に変えていくのがこの本の本当の面白さ、といっていいとおもいます。

革マル派のリーダーだった黒田寛一の「読書のしかた」では、本好きをギクッとさせつつも、鋭い指摘をしていると、佐藤さんは書きます。

情報収集は怠ってはいけないが、そこに時間をかけすぎるのは無駄であるということだ。ただし、その際はなんとなく字面を追うだけの「ザット」読みではなく、集中して速読し、必要な情報だけを抽出する訓練をすべきであるといっている。(113ページ)

そのほか、この本には「音読の効用」や「ノートの作り方」などのノウハウが満載。

もちろん、革マル派は今なお暴力を辞さない危険な存在であるというのは紛れもない事実ではあるんですが、

そのことが理由で、同書のノウハウを否定するのではなく、ノウハウだけをちゃっかり拝借することができるのが、頭のいい人間なんだろうと、私は思うわけです。

難読作品の「省エネ読書ポイント」もしっかり押さえる

この本は、上記のような「危ない人の本」だけでなく

ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』や高橋和巳の『邪宗門』なども取り上げています。

この2作、私も手に取ったことがありますが、とにかく読みにくい。

そんな人にも、概要をわかりやすく教え、どういうポイントがあるかを示してくれるのがありがたいところです。

そして、この本を読んで興味が湧いた人のために原作の「ちょい読みポイント」を指摘しているのもうれしいところです。

例えば、『カラマーゾフの兄弟』では、新潮文庫版上巻の後半に収録された作中作的存在『大審問官』が最大のポイントであり、ここが読めれば何とかなる、とヒントを教えてくれるわけです

また、『邪宗門』では、「興味が湧いたら下巻の27章である『三日天下』だけでも読め」といったちょっと役に立つアドバイスも書かれているのです。

もちろん、概要はこの本で抑えられるので、無理に読まなくても困りませんが。

ヤバい本は、それだけで面白い

とまぁ、ちょっと意識高い人に役立ちそうな内容がてんこ盛りの同書ですが

そんな気持ちを持たずとも、野次馬根性で読んでもこの本は十分面白い!!

なぜなら、収録作品は「歴史の中で、異様なエネルギーを持って影響を与えた劇薬」であり、危険な香りがプンプンただようからです。

国語の教科書に採録される文学作品って優等生っぽくて面白くないが、犯罪あり、不倫ありといったドロドロな作品は読んでて面白いってのと一緒だと思います。

そういった『歴史的な問題作』をサクッとさわりを読める、その一点でもこの読書ガイドは秀逸だと思います。

【参考文献】

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