最近、注目のマンガにビッグコミックで2021年第16号から連載開始した『絶滅動物物語-地上より永久に消え去った者へのレクイエム-』があります。
もともと、タイトル聞いた瞬間に、これは絶対見逃すまいと待っていた作品でしたが、いざ読んでみたら、これが想像以上に面白い。
有史以来これまで7000種にも上るといわれる絶滅動物が、人類にいかに滅ぼされたか…というテーマは重いけど、読まずにはいられない荘厳さを持っています。
旨すぎて乱獲されたステラーカイギュウ
動物たちは当然、言葉を話さない存在ですから、彼らの絶滅ストーリーには人間たちの存在が大きくかかわってきます。
第一話のステラ―カイギュウは、ベーリング海で発見された体長7.5メートルにも及ぶ大きさのジュゴンの仲間。名付け親のヴィルヘルム・ステラ―の名前を付けられたこの生物は、その大きさに反して海藻を食べて暮らす穏やかな動物でした。
ただ、肉(子牛に似ていたとか)や脂肪、ミルクに至るまで実に美味い上に、殺すのもカンタンとあって、船乗りたちの貴重な食料となってしまい、発見からたった27年で絶滅。
と、このストーリーを伏線として、この動物の名前の由来となったヴィルヘルム・ステラ―の人生を重ね合わせます。
ステラ―は病に倒れ死の間際、自分を見捨てた者たちへ「ケダモノめ…」と呟きます。
しかしステラーカイギュウたちを思い出しながら、ケダモノ以上に残酷なのは我々人間なのではないか、とひとり呟く姿が不思議な余韻を残すのです。
モノ言わぬ動物の代わりに、登場人物がいう言葉が突き刺さる
ステラ―のように、登場人物が実に印象深いセリフを言うのが、この作品の面白いところ。
それは、我々への警句に響いたり、第二話の少女(多分、不思議の国のアリスのモデルだと思う。この辺は記憶曖昧で…)の場合も胸に突き刺さります。
少女は昔絶滅したみょうちきりんなドードーのはく製の一部を見ているうちに、
人間の言葉を喋るドードーの幻に出会うんです…詳しい経緯はマンガを読んでいただくとして…彼らの滅びへの物語を聞くうちにに少女は「二つの死」の話を思い出します
死はまず命が絶えたときに訪れ、第二の死はその存在がすべての人間の記憶から消え失せた時である…と。
第一の死、つまりドードー絶滅はもはや取り返しがつかない、しかし存在と絶滅まで追い込んだ人類の物語を忘れ去るわけにはいかない、と少女が誓うシーンに、私なんぞは深く胸をうたれた次第です。
第3話で絶滅したのは誰か?
第3話では、アメリカ・バイソンを取り上げています。
私はコレを読んだとき、果たして絶滅したのは誰か?という思いにとらわれました。
アメリカ・バイソンは現地に住むネイティブ・アメリカンの貴重な資源であり、彼らは必要な分だけを獲って生活するというリズムをずっと守ってきました。
後に入植する白人たちは、目障りな彼らを滅ぼそうと、いわば「兵糧攻め」の形でバイソンに目をつけるのです。
その後のアメリカ・バイソンは自然保護区で激減した頭数の回復が計られ、「狩りをする程度には回復した」とだけ書かれます。
しかし…生活の重要な柱であるバイソンを激減させられ、昔からの生活を根こそぎ破壊されたネイティブ・アメリカンのその後には、一切触れられない。
そこが逆に、背筋が凍るような恐ろしさを感じるエピソードだと思います。
俺たちも、いつかは同じ運命をたどるのでは、という恐ろしさ
現代の人類は正直、駆逐される天敵を持っていませんが、
第3話の白人たちが、ネイティブ・アメリカンにした仕打ちを考えると、もしかしたら同じ人類同士でぶつかり合って自滅する…という暗い結末をつい思い浮かべてしまいます。
そんな未来、嫌ですがね。
ただ、どの話にも共通するのは「動物のことなんか知っちゃいない」と言わんばかりの人間の傲慢さがプンプンしているということ。
このマンガのエピソードは今の我々に結構ハードで、きわめて重要な警句を発しているように、私には思えるのです。
このマンガ、ぜひ一度読んで、世のマンガファンに知っていただければ、私は幸甚の至りです…として、このブログの記事を締めくくりたいと思います。
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