下品な時代をしなやかに生き抜く~佐藤優『メンタルの強化書』

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この記事では、佐藤優『メンタルの強化書』を紹介します。

佐藤さんの著作は大まかに分けて

①作家としての自己啓発系の軽い読み物や小説

②元外務省主任分析官のキャリアを活かしたニュース解説

③神学の専門家、としての宗教、哲学の本

の3種類がありますが、下にいくほど難易度が上がります。

しかし、本書は当然①。一番読みやすいカテゴリーなので手に取りやすいとおもいます。

今の世の中ってホント気ぜわしくて、中々自分を客観的に見ることが難しい。だからこそ、こういう本を読んで、自分を冷静に見つめる時間を持つことはとても大事だとおもうのです。

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繊細で奥ゆかしい人が生きづらい世の中

佐藤さんは情報を分析して、本質的な問題構造を把握する仕事を長年手掛けてきた人なので、社会問題の分析は、他の人よりももう一層深いところを探りにいく特徴があります。

彼の眼から見る現代の世の中は、一部の「3かく人間(義理を欠き、人情を欠き、恥をかいてもへっちゃらな鈍感さを持つ人間のこと)」が成功者としてのし上がり

義理を大切にし、人の痛みが分かり、自分の分をわきまえるような「奥ゆかしい」タイプはダメ人間として割を食う世の中であると分析しています。

そして、そんな人たちは、「下品な3かく人間」にすり潰されないようにしながら、ほどほどを積み上げて生き残り、生活の場を確保していくにはどうしたらいいかを、できるだけ広汎に考察したのが本書です。

柳に雪折れなし!柔軟な思考でメンタルを守る

佐藤さんはまず、現状が非常にギスギスした空気を持ち、いったん落ちたら中々這い上がれない世の中であることを「引きこもり」を引き合いに出して説明します。

スクールバスを襲撃し、児童や保護者を殺傷した事件で、根拠もないのに「引きこもり=犯罪予備軍」と言わんばかりの報道がなされたり、

元事務次官が引きこもりの息子を殺害した事件を「よく分からないのに」犯行に同情する論調が目立っていた件を挙げながら、一気に炎上し、乱暴な意見に喝さいをおくる社会の異常性を指摘します。

そして、こういった傾向から一歩引き、意識して冷静さを保つ姿勢が、熱狂に引きずり回される今の社会ではかなり重要であるというのは、私も同感です。

ネットなんかでも、つねに怒りを持ち人にかみついてばかりの人がいますが、

本当の強さは、そんな周りの空気を上手に受け流しながら、徐々に本来の自分を復元できるしなやかさが大事だということです。「柳に雪折れなし」というわけですね。

「前のめり」な生き方でなく、一歩引いた態度を守る

人間は、生きている環境に思考を縛られがちです。

だけれど、いまの世の中で常識だと思っていることでも、他の時代や国では決して常識ではないことなんてこの世の中にわんさかある、そんなことを常に頭にいれる大事さを佐藤さんは説明します。

今は、「自己責任」という言葉が一般化していますが、これも要注意な言葉である、といいます。

そもそも、この言葉誰が言い出したのか?

それは、これまでの失敗の責任を取りたくない人が自己弁護のために言ってるだけじゃん!というわけです。

こんな時に「そうだ!これからは自己責任の時代だ!!」と突っ走るだけでは、体よく利用されてすり潰されるだけ。

佐藤さんは様々な視点を出しながら、この自己責任という言葉がいかに異常かを読み解き

よく考えないでガツガツ突っ走ることへの危険性を戒め、一拍置いて、冷静に判断することをすすめています。

再発しやすい「メンタル崩壊」をできる限り予防する

「数字を上げろ」といいつつ、「残業をするな」「有休を取れ」と、

アクセルとブレーキを同時に踏むような現状に板挟みにならないためには、なるべく自分がどのスタンスで生きるか、を冷静に判断することが大事とも言います。

心というのは、一回折れると再発を重ねるほどに再発率が跳ね上がる

自分のメンタルの強さ、環境などを考えながら、自分はガツガツ行くべきか、それともホドホドを志向するか、意識的に選択し、生きていくことが大事だと言います。

そして、疲れたら休む。変だなと思ったら専門家の診断を仰ぐなりの予防を施し「心が折れる」ことを事前に防ぐ努力をすることが大事。

それでも折れてしまったら、二度と折れないように、自分の心を維持できる6掛けの仕事量に落として決して無理をしてはいけない、と書いています。

仕事以外にコミュニティを持つ

仕事以外に、趣味やスポーツなどで、別のコミュニティを持ち、

ボランティアや地域活動などの非営利活動の分野にも手を延ばしてみるということも大事。

お金を生み出さなくても大事なものが人間にはある。現代は金銭がものすごい重視されているけれど、心の安定を保つためにはそれ以外の関係も大事だといいます。

考えてみれば、私の親世代は典型的な会社人間が多く、会社側もレクリエーション活動を手厚くする傾向にありました。会社が定年まで「一家」として公私を面倒見ていたわけです。

しかし、私のような就職氷河期以降の人間では、こういった会社の活動は全く期待できません。

だからこそ、意識して自分からそういった分野に「自分の居場所」を持っておくことが大事だ、ということです。

最後に…

ここまで、ザっと紹介しました

読んでいただいた方にとっては、「何を当たり前のことを」という方もいるでしょうが、これはあくまで教科書を意識した「強化書」ですから、分野は広汎に、内容は基本的な事柄に落ち着くことになるとおもいます。

大事な事をまとめますと

①時代の空気に飲み込まれず、自分というものを見失わないこと

②世間が押し付けてくる価値観を、一拍おいて冷静に判断する

③自分の強さを冷静に認識し、破綻に近づく「メンタルの崩壊」を予防する

④経済的な生産活動とは別の価値観を持つコミュニティやアソシエーションに加わり、お金がすべての価値観を避ける

ということじゃないかな、と思います。

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佐藤優『友情について』を読む…佐藤優さんと高校時代の親友、豊島昭彦さんについて書いた本です。豊島さんの子どもや、将来生まれるかもしれない、顔も分からない彼の孫に「こんな素晴らしい人間が生きた」というのを残すこと、そして私たち読者にもそれを共有して欲しいという思いが感じられて、素敵な本でした。

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