子供の頃、学校の図書室にはズラリと伝記が並んでいました。
野口英世、キュリー夫人、リンカーン、ガンジー、etc…僕自身は全く食指が伸びなかったので伝記はスルーしていました。みんなすごい立派過ぎるからちっとも読む気がしませんでした。
やっぱり、汚い話は面白い!
ところが、大人になってからがぜん、伝記が好きになりまして色々読み漁っております。
まず、挙げられるのが子供の頃はタブーとしてそぎ落とされる、偉人の変な部分(特にお金とか、性の話題)が、大人用の伝記では隠さず書いてあるからです。
特に気に入っているのが野口英世の話です。
野口英世っていうと…まずは努力の人!
貧農出身、子供の頃火傷して左手が不自由になったこと、「てんぼう」と呼ばれていじめられていたこと。お母さんの教えで必死で勉強した少年時代。
手術で手が治ったのを機に医学を志し、渡米。後年黄熱病の研究にアフリカへ赴き、黄熱病の原因菌を突き止めた…と思ったら自身が黄熱病に感染、客死するという…
波乱万丈かつ劇的な人生がまぁ、有名です。
ところが、この本を読むと彼への見方がガラリと変わります。
婚約の持参金を渡米前に使い果たす!
まず、千円札の肖像画になっているのにお金の使い方が荒い。そして他人との約束を平気で破る嫌な奴。
その好例として、よく言われるのがアメリカに渡る前夜の話です。
渡米前に資産家の娘と婚約し、その持参金(当時のお金で300円、今なら大体100万円位、いやもっとかな)を渡航費して使う予定だったのに、仲間とどんちゃん騒ぎをして渡航前夜にキレイさっぱり使い果たし、当時の彼のスポンサーに泣き付いていたりします。
非道!婚約すっぽかして違約金をスポンサーにおっかぶせる!!
で、渡米後は婚約話を一方的に破棄してアメリカ人女性と結婚してしまう(その時、破談金を支払ったのは野口本人ではなくスポンサー)
…自分から破棄するのではなく、破棄されるように仕向けていたようで、これでは金が目当ての婚約とも言われても仕方ないでしょ、これ。
この件ではスポンサーも諄々と野口に説いていて『人の道徳に背くような事をしているんだから、人一倍努力しないとただのクズになってしまうぞ』という手紙なんかも残っていたりします。
本人もその事は承知していて後年、彼の伝記を出版したいという企画に『自分は伝記に書かれているような聖人君子じゃない』という事を友人への手紙か何かに書いていたそうです。
それでも、すさまじいまでの向上心と努力(おそらく、ハングリー精神のなせるわざじゃないかなと思います)、そして研究成果(現在では否定されているものも多いですけど)はすごい。
彼は人格はきわめてヒドイ出来だったけどそれを補って余りある部分がある。そこがまた、人間くさくていいな、なんて思っちゃいます。 友達には絶対になりたくないタイプですけどね。
だって、貸した金を返さないどころかさらに無心を繰り返されてケツの毛までむしられそうだし…。
実際にそんな彼に惚れ込んで蔵一つつぶした人もいるくらいですから…おおこわ!!
なんでこんな奴を千円札の肖像にしたのか?
これほど極端な人も珍しいですが、どんな人にも光と影があり眺め方を変えると見え方も違ってくるおもしろさを人間は持っているんだ…という事を伝記は手軽に(実害を被ることなく)楽しませてくれると思います。
あと個人的には、経済観念の『け』の字もなく、また信用を無駄遣いするような野口英世を1000円札の肖像画にするのは絶対間違っていたと思います。
それで「なぜ野口英世が1000円札に選ばれたのか?」を調べてみたら、こんなページが見つかりました。
このページの解説を拝借すると…
時の財務大臣だった塩川氏によると「学術重視、男女共同参画、社会の推進」などを視野にいれて紙幣の人物を考えたそうです。
そして科学技術で世界に認められることを狙って、科学者の先人とも言える野口英世にスポットが当たったそうです。
それに、肖像画として模造されにくいヒゲとシワがあることが条件で、それにぴったりあったのが彼だったといいます。
ヒゲとシワがあると、偽造するハードルが一段階上がる、と。
でも…ヒゲとシワにこだわるなら、私は高橋是清選ぶぞ、うん。
この選定に当たった人、ゼッタイ前述のエピソード、知らないで入れたと思いますが…皆さまのご感想はいかがなものでしょうか?
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