池波正太郎『その男』を10年ぶりくらいに読み返す

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先日、いつも通る道のそばにある元クリーニング店の店先にいつものように

「差し上げます」の看板が付いた古本がいっぱい…

本好きの私、ついのぞき込んで

「おっ!」と思った作品がありました。

池波正太郎の長編小説『その男』です。

この本、高校生の時に友達の父親からプレゼントされてドはまりし、その後池波作品を愛読するきっかけになった作品なんですが、

あの本良かったな、と思っても読みなおすキッカケがなかったんです。

それで、「こりゃなんかの引き合わせだな」とおもった私は、この3冊をいただいて帰ってまいりました。

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『その男』とはどんな作品か?

この作品は幕末から明治が舞台です。

主人公の杉虎之助は旗本の嫡男だけど身体が弱く、父の後妻が生んだ弟が健康優良児だったこともあって

家の中で疎まれ、不遇な立場にあった13歳。

ふとしたことで知り合った「おじさん」に弟子入りを志願し、そのまま江戸から姿を消した彼は

数年後、その「おじさん」こと、師匠の池本茂兵衛に仕込まれて、自らも腕の立つ剣士として江戸にもどってきます。

彼は師匠の素性を知らないまま、旅から旅を続けていましたが

師匠の「仕事」がいわゆるスパイで、途中で別れた師匠を追うことで、その世界に足を踏み入れることになる…というお話です。

登場人物が市井の人物が中心となりますが、幕臣で隻腕の剣士としても知られる伊庭八郎と友情を深め

討伐されることになる幕府側の内側を目撃し、

維新後には逆に薩摩の人斬り半次郎こと、中村半次郎(のちの桐野利明)や西郷隆盛などとも親交を結び

薩摩側から西南戦争をつぶさに目撃することになる

歴史の敗者側から舞台裏を覗き見るような、ドキドキ感がたまらない作品であります。

一人ひとりは魅力的なのに、立場で斬りあう不条理

この小説の素晴らしい所って、主要人物がみんな魅力的なところなんです。

元密偵で、後に薩摩藩士に斬られる主人公の妻、礼子は「とてつもなく魅力的で、でもそれが恐ろしい」と、「敵」であった西郷を評しています。

その魅力的な人物が一瞬すれ違う時に命を懸けて闘っていたりする。

主人公の師匠の池本茂兵衛を斬った男を、主人公は必死で探すのですが

それが後に主人公と親友といってもいい仲になる桐野利明だったりするわけです。

主人公にとって「実父以上の存在」と「親友」ですから…主人公の内心で大事な価値2つが真っ向からぶつかり合い、葛藤するさまは

中年になって読んでみると、シミジミ感じちゃったりするわけです。

立場の違いというだけで、実際に顔を突き合せたら理解しあえる存在が

敵味方に分かれて命の取り合いに血道をあげることになる

その、不条理ですよね。それがずしーん!と読む立場にのしかかるわけです。

難しいと感じる暇がないくらい、一気呵成に読める!

そんな難しいことを考えたのは、読み終わった後で、

10年ぶりくらいにページを開いたら、ストーリーに没頭してしまい

やめられない、止まらない…一冊300ページの全3巻、900ページを飯を食いながら、風呂に入りながら、枕元でも読み進め

3日かけて読み終わった時に、もうえも言われないご馳走をたいらげたように

深いため息をついてしまいました。

本を読むことは好きですが、久しぶりに「堪能する」という言葉がぴったりでしたね。

私は割と好きな作品なのですが、池波正太郎さんは「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人藤枝梅安」などの大作が多くて、ファンもそっちに目が行っちゃいがちです。

でも、『その男』。すごくおススメです。ぜひご一読を。

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