この記事では『銀行王 安田善次郎』を読んでみた感想を書いていきます。日本にもスケールの大きな事業家がいたんだということを改めて知りました。
安田善次郎って誰?
名前をご存知ない方もいると思うので、まずは彼の起こした会社を挙げていくと、
安田銀行(現在のみずほフィナンシャルグループ)、損保ジャパン、明治安田生命と金融が多いのが目につきます。
戦前の財閥では金融を中心にした安田財閥の祖であり、日本の銀行業務の基礎工事はこの人の手によって築かれたといっても過言ではありません。
また、稼いだ金を世の中の役に立てることにもとても熱心で、
東京大学の「安田講堂」は安田善次郎さんがその建設資金を寄付したものです。
ただ、安田さんご本人は、寄付は匿名を旨としていました。死後に話が明らかになり、今の名称で呼ばれるようになりました。彼は「陰徳を積む」ことをよしとして、寄付は匿名を貫いていたのです。
お金を稼ぐだけでなく、志を持ってお金を使おうとした人
彼は日本の資本主義が育つ課程で銀行家として企業を支える裏方に徹し、金融から日本の近代化に大きく貢献しています。
そして、ただ稼ぐだけでなく、日清、日露戦争では国債を引き受けて国を支えました。当時の清は眠れる獅子と呼ばれた大国であり、ロシアは世界最強といわれた陸軍を備えた強国でした。
国を守るためにあえて買い手のない国債を引き受けたわけです。
同じ時代を生きた林学博士、本多静六さんが実際に安田善次郎さんに会い大変意気投合したと著書『私の財産告白』に書いています。
同書によると、晩年の安田さんは今まで儲けたお金を使って世の中の役に立つ事業に投じたいと様々な構想を語ったそうです。
本多氏には具体的にどんな投資を考えていたのか話していたようですがが、本多氏はそれを明らかにしていません。
しかしこの『銀行王 安田善次郎』を読んでいると、もしやこれが安田氏が本多氏に語ったことじゃなかろうか…と思わせるものがいくつか出てきます。
例えば、新幹線。新幹線に先立つ事、50年以上前に東京大阪間を6時間でつなぐ高速鉄道構想が出てきます。
また、東京都再開発計画への協力なども考えていたようです。
それも、関東大震災後に後藤新平がぶち上げた「大風呂敷」をはるかに凌ぐスケールの大きなものだったそうです。
お金とは、稼ぐのが半分で上手に使うのが半分だと「お金儲けの神様」と呼ばれた故邱永漢さんは語ります。
お金はブタ積みしてても意味をなさない。有為な事業に投じてこそお金は生きると、銀行家だった安田さんはきっと考えていたに違いありません。
金持ちを卑しむ日本の悪弊
しかし、その志半ばにして、安田さんは朝日平吾という人物に刺され、非業の死を遂げます。
朝日の残した「斬奸状」には、
『金があるのに世の中にカネを回さねえ守銭奴に天誅を下してやる!』と書いてあったそうです。
実際には前にも書いた安田講堂他、安田善次郎さんは匿名を条件で多くの寄付を行っていました。
しかし安田氏が殺された時、マスコミは事もあろうかこれまで幾度となく日本に貢献した人間をまるで極悪人のごとくバッシングし殺人犯を英雄にまつりあげました。
日本人は世界で一番と誇ってもいいと思っています。東日本大震災で発揮された規律心や道徳心が強く、教育が尊ばれ、世界一安全で豊かな国…。
ただ金持ちを褒めてその力を有益な方向に向けさせることに意識がないのが残念だと感じる時があります。
金持ちを褒めて、もっと面白い日本に投資して欲しい
安田善次郎氏が夢見た日本の姿は、現代の我々から見ても、先進的なものが多いと思います。
それが成し遂げられたら、どう日本が変わっていたのか…
想像するだけでも面白いのですが、それよりも私たちは、安田善次郎という人物の死から「優れた成功者に優れたお金の使い方をしたら、それを素直に称賛する心が欲しいな」と思いを馳せるのです。
これからこの国から多くの成功者が輩出されることを僕は信じていますし、ぜひそうなって欲しいと願っています。
世の中には人の懐をやっかみ、妬む輩がいるのは仕方ないですが、彼らを嫉妬の海に引き摺り込むことになんか意味でもあるのでしょうか?
彼らの力を社会を良くする方向に向けさせることが出来れば、日本はもっと良くなるし、彼らもさらに輝く。
そんなことをこの本を読んで考えさせられた次第です。
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