最近私の中でプロ野球本の「当たり著者」として急浮上しているのが、長谷川晶一さんだ。
実は当ブログの中でも、伝説の弱小球団「高橋ユニオンズ」を描いた、「高橋ユニオンズ青春記」や、
93年、94年の日本シリーズを関係者に聞き歩いてまとめた「詰むや詰まざるや」と
一回読み始めたら、筆者の心に従って先が知りたくなるような熱い書き味と、証言者を丹念に訪ね歩いて、詳細に組み上げる緻密さが同居する
今最も魅力的な作家だと思う。
そんな彼のことを知ったのは、実は先だってブログを整理していた時で、あの本面白かったなと著者を整理していたら
同じ人が書いてるんだ!とビックリ。
そうしたら、どうしてもまた別のが読みたくなり、ずーーーーーっと気になっていた広岡達朗さんの本に手がのびた。
…というわけです。
高齢の人に話を聞く難しさ
それにしても…今作を読み始めた時に一番感じたのは
「この先どうなってしまうのだろう」という不安感でした。
もう広岡さんは90を超えてしまってます。
要はちょっと「ボケて」しまっているんです。
著者はこの体験を関根潤三さん、野村克也さんへのインタビューをとった時の経験を書く形で
この本のベースを整えています。
・アポを忘れ、前会ったことも忘れる
・昔のことはよく覚えてはいるが、今いる喫茶店(本人指定)が分からない。
・杉浦享さんの話を聞いていたら、杉浦忠さんの話を延々と続ける
そして…
・スイッチが入れば語り出すが、問題はいつ入るか分からないこと。その日は徒労に終わることもザラ
…こんな中で果たして、広岡達朗は語りきることができるか!?
…なんか、ドキドキしてくるでしょ??
ボケても徹頭徹尾、是々非々の人だった
ところが…著者がすごいのは、そんな広岡さんのところに通い詰めて、
スイッチが入るまでもサラリと書きつつ入った後の
舌を巻くほど是々非々な「広岡達朗」をキッチリ書き切るところ。
これで、昔抱いた「がんばれタブチくん」のヒロオカ監督のイメージが
見事に上書きされたくらいだった。
齢90を超えた広岡さんから
信念をもって妥協を排し、選手たちとぶつかり合いながら
情熱をこめて、くらいついてくる選手たちにとことん向き合った
1978年の広岡さんを復活させることに成功している。
そして、78年が終わって、崩壊したはずのスワローズの選手たちの後の追想が挟まれると
枯れかけた広岡が持つ「是々非々の男」の生き様がありありと再生されるのは
読んでて実にエキサイティングだった。
当時のヤクルトに対してそんなに思い入れがない(この年にブログ主は生まれたんだから当たり前)私だが
初優勝のシーンを見たとき、思わず目頭が熱くなっちゃった。
この男、ただの老害にあらず
それにしても、である。
この人は昔から「歯に衣着せず言う」ことが習い性だったし、
それがネット記事なんかで使われて老害扱いされることが多い。
その事を著者は明らかに不愉快に感じている。
世の中だとひと言で言い換える「レッテル」でようやくホッとする人が
実に多いようだ。
だが、私もそうだけど…人間ってそんな単純じゃなくて色んな面を持ち合わせていて
たしかにズバッと切って捨てる表面のキャラとは別の
娘に「パパは円満退社できない」と評され、
「ジャイアンツは大したことない」と言った当時の自身こそが
「ジャイアンツコンプレックスだったのかもしれない」と振り返ることのできる
ものすごく面白い一面があって、いいじゃないか。
そんなふうに思いながら、読了した次第です。
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