伊藤章治『ジャガイモの世界史』を読む

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先日、ふと思い出して読みたくなって、この本を買ってきました。

伊藤章治著『ジャガイモの世界史』です。

今年に入ってから、私の中で空前の「ジャガイモブーム」が発生し、

マッスルグリルで紹介された「ジャガバード」にドハマりし、先日はカレー味を開発してしまったりと、すっかりこの作物に胃袋を掴まれております。

世界的にみても、赤道直下から北極圏まで、栽培地域は幅広い。しかしこのジャガイモ、ワールドワイドになるまで、わずか5百年しか経っていない

インカ帝国から世界を旅したジャガイモは、そのまま人間の近世~現代の壮大な物語を支えた、すごい作物なのです。

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新大陸のローカル野菜が、世界を支える救世主に

もともと、ジャガイモはインカ帝国で作られていた野菜です。

荒れた土地でもよく育ち、豊かな実りをもたらしてくれるものの、ジャガイモがヨーロッパに渡った正確なことは実はよく分かっていません。

多分誰かが、お土産に持ってきたのが最初じゃないか、とも言われています。

ところが当時のヨーロッパは小寒期と呼ばれる、気温の低い、食料の取れない時期にあたりました。

限られた食料を奪い合うとなると、自然と政治状況もきな臭いものになりますし、またこの食料を確保することが政治安定の第一歩となります。

その過程で、荒れ地でも育つ新大陸渡りの珍しい植物が、一躍脚光を浴びることになります。

他の作物も育たない荒れた土地でもOKで、小麦よりも歩留まりのいい収量。

各国はジャガイモの増産を国策として進めていきます。

あの手この手!各国の「普及策」

しかし、です。今ではこんだけフツーに食べられているのに

当時は聖書にない食べ物を作ったり口にするなんて、もんのスゴイ抵抗がありました。そんなわけで、あの手この手で普及策を打ちます。

その普及策にもお国柄が出ていて面白い。

例えば、プロイセン(現ドイツ)のフリードリフ2世は「ジャガイモ令」を発動し、嫌がる農民を龍騎兵に見張らせてまで、強制的に育てさせました

今では、ドイツと言えば「ビールとジャガイモ」ですが、導入時はこの「ごり押し」が相当効いているわけです。

また、ロシアのピョートル1世は、もっと強烈で遅々として進まないジャガイモ増産に業を煮やし、民衆の前に山とイモを積み上げ「俺のイモが食えんのか!目の前で食わなきゃ打ち首だ!!」と迫り

人々は「イモか死か!」と迫られてようやく食べるといった案配でした。

一方フランスでは、

プロイセンやロシアのようなごり押し方式ではなく、小知恵を働かせました。

まず、宮廷の庭園にイモ畑を作り、その花がキレイだということで王様や王妃が服のアクセントに飾る「イメージ戦略」から入りました

また美味しい料理を積極的に開発します。その上で、王様のイモ畑を一般人に大公開!警備兵が周りを厳重警備した上で。

一般人は「何を作ってるんだ?」と思い「厳重に守られているとはよほど珍しい(美味い)ものに違いない!」と興味を掻き立てらせ、わざと夜、警備を緩める。

そうすると、夜な夜なイモドロボーが出て、それを種に一気に広がった、という嘘のようなホントの話もあります。

大混乱の時期でも大活躍

そんなこんなで、ジャガイモが栽培されるわけですが、なにしろ、荒れ地に植えてもよく育つから、500年たらずで世界を席巻。

だから、ジャガイモは「貧者のパン」と呼ばれ、開拓地、麦が育たない土地などで、人々の胃袋を支え続けます。

アイルランドでは、イギリスにいい土地を取られ、食うためにせっせとジャガイモを育てました。結果、人口は倍増。

20世紀に入って戦争となれば、空き地があれば即、イモ畑に大変身!ソ連崩壊後のロシアにハイパーインフレが発生した時も、人々が家庭菜園で育てたジャガイモがあったから、飢えずにすむといった具合です。

そして、今…私が大恩恵を受けている

21世紀の現在は人口増による食糧難も予想され、ますますジャガイモに頑張ってもらわなきゃいけなくなりそうです。

そして、個人的には「意外にカロリーが低い」ので、私が毎週のようにジャガバードを作っては食べて、5キロのダイエットに成功!!

まぁ、「銀シャリが無上の幸せ」と言っていた祖父が見たらなんと言うのかは分かりませんが(苦笑)

何しろ、「イモだフスマだを食ってワシは頑張った」という人ですから、

可愛い孫(現在はただのオッサン)がジャガバードやブランパンを三度三度食ってたら、草葉の陰でさぞお嘆きにはなるでしょう(苦笑)

この本を読んでいると、しみじみ「この世界にジャガイモがあって良かった!」と思います。

あと、この本は小ネタがこれでもか!と盛り込まれていて、そういう意味でも読んでいて飽きません。

中公新書というと、地味な表紙のお堅いイメージなのですが、この本はしっかりした内容ながら読者を楽しませて、大事なところを伝えよう、という著者の意気込みを強くかんじます。

歴史に興味のある方も、ジャガイモ好きな方も、ぜひご一読をお勧めします!!

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