『昭和天皇物語』4巻を読む

マンガ

毎号楽しみにしているマンガの一つに、能條純一さんの『昭和天皇物語』があります。

先日4巻が発売されて、早速読んでみました。中心は皇太子裕仁殿下のヨーロッパ訪問と、彼の摂政就任が決まるまでの原敬、皇后陛下の綱引きがメインになります。

これからのテーマは「天皇とは何か?」

これまでは、皇太子の成長などの個人的な方に比較的重心が置かれていましたが、3巻の半ばからは「天皇のあり方」についての描写が加わってきます。

そのためか、「分かりにくい」「面白くない」という感想を持たれる方も出てきています。

しかし、ここを理解出来ないと、これから先の話も分からなくなる可能性がありますので、拙いながらここで書いてみようと思います。

皇太子のヨーロッパ訪問

そもそも、皇太子が洋行するというのは、皇族の歴史から見ても初のことであり、大変な反対を原敬総理大臣が押し切る形で実現しました。

実際よりも若く見えない?と思われる原敬。彼の政策は立憲君主としての天皇という未来像を思い描いていたと思われます。

その動機は、なんと言っても将来の天皇である皇太子に、ヨーロッパを直に見て、感じて立憲君主の何たるか?を学びとることにあったのは間違いないと思います。

実際、旅程をこなしながらもイギリス国王ジョージ5世からも夜に突然非公式に訪問を受け、国を統治する立場の責任として、第一次世界大戦の戦争被害を忠告をする姿に、親皇室の家庭的改革を意識します。

また皇太子はスコットランドではアソール公の気さくで質素、飾らない姿に君主の理想像を感じ取ります。

原敬と皇后の綱引き

一方で日本でも、困った問題が起こっていました。

大正天皇の健康問題です。

大正天皇は幼少のころより健康に恵まれず(というか、明治天皇の男子は、第三皇子である大正天皇以外は夭折)、天皇になってから、その健康問題が再び頭をもたげてきたのです。

そのため、病床にある天皇に代わり、皇后が事実上、公務を執行する状態になっていました。

原敬をはじめとする臣下からすると、なんとしても、公務の遅滞を防ぎ、国体の動揺を防ぐために皇太子の摂政就任を、と動きます。

しかし、「摂政就任」により、病床の身とはいえ皇室の将来が臣下に握られることに、皇后は強い危機感を抱きます。

夫である天皇の地位を守る…皇后は皇室が臣下に干渉されることを警戒していました

天皇はいるのに、それをないがしろにして摂政を置くなど…という考え方は、現代の我々には若干古風なイメージを感じますけど、

まだ、強烈なカリスマを持っていた明治天皇が崩御されて、20年経っていない…

まして天皇は病床にあり、明治帝と何かと比較され、評価されるというのも重荷ではなかったか…

それでも、夫である天皇を守るのは、私しかいない…と皇后が考えたのも当然でしょう。

当時の皇后の危惧は、無理からぬことだったと思います。

現代から見ても、かなり難しい「天皇の立場」

このように、当時の天皇も「どうあるべきか?」はかなり流動的で、人によって考え方も違いました。

この後、昭和に入ると天皇親政を求める軍の青年将校が現れ、テロが起こるたびにますます激しく、吹き出すことになります。

また、たとえ天皇が執務が出来なくなっても摂政が中々置けなかった一時からは、新しいことを導入する時にかなり大変な手続きを踏まねばならなかったことが分かります。

これは、私たちも思い当たる節があるでしょう。

先帝のご退位や今上のご即位においても手続きに大変な手続きを要したことを想起させます。

天皇が、「立憲君主」から「国民統合の象徴」へと変化した現代もおそらく様々な形で問題が現れるでしょうね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました