ツタンカーメンの呪いに心底震え上がった

自分はホント、バカでして…

ウチの実家ができたのは6歳の時。当時、電車が通る度に耳をふさいでいました。

2階の子供部屋は、高崎線の電車が通る度にけたたましい騒音が響き渡るんですよ。当時は、線路と実家の間には何の建物も建っていませんでしたから、そりゃもう、うるさいのなんの。慣れるのに、半年ほどかかりました。

で、電車が通り過ぎると、シーン…という静寂が余計強調される。

静かすぎると耳にモヤーン、というかキーン、というか静寂の音が伝わってくる。それが怖さを倍加させるんですよね。

そんな環境に慣れて2,3年が経った、ある夜…

子ども部屋に据え付けられた2段ベッドの上では、当時6歳の弟が寝息を立てていました。兄の私はベッドの下でじっと、上のベッドを眺めながら昼間読んだ本の余韻に打ち震えていました。

「僕は今日、とんでもないことを知ってしまった」

小学校2,3年生ころの僕は、休み時間が憂鬱で仕方がなかったんです。グラウンドで跳ね回る同級生たちを恨めしそうに眺めながら、行く当てもなく校内を歩き回り、最終的にたどり着いたのが、小学校の図書室でした。

人気がない、古い本の発する独特の香りが充満する部屋の、床に座り込み、ジッとしておりました。

でも、子供のことですからジッとしているだけでは時間が持ちません。

何となく、本棚にある本の中から、『ツタンカーメン』という本を見つけました。

表紙には、アイラインをごってり描きこんだ金色の顔。人間の顔だと分かるけどあまりにデフォルメされている無機質なマスク。

妙に気になって、本を開きました。

…何千年も前のエジプトの王様の墓を探し続けたハワード・カーターが、作業員の宿舎の下はまだ掘ってないと気づき、最後の賭けに掘ってみた。

そこから階段が現れる、興奮するカーター。

階段の突き当りには封印の跡。封印を破ると黄金の輝きが漏れている。賭けに勝ったカーターは一気に封印を破ると、そこには呪いの呪文が彫られていた。

「王様の墓を暴くものには、災いがやってくる」

その予言通り、世界的な大発見をしたカーターに、次々と不幸が重なる。

スポンサーであるカーナボン卿が熱病で急死。

作業員たちも正体不明の死因で次々と死んでいく。新聞は「王様の呪いだ!!」と連日書き立てた。

今、これを読んでいるあなたも、王様の呪いが降ってくるかもしれない…

その夜、自分が呪い殺されるかもしれないと幼心にトラウマを植え付けられ、幼いながら毎晩マクラを濡らしましたさ。そう思うと見えるもんですな。天井の影があの金色のマスクに見え、静寂の音がツタンカーメンの呪詛に聞こえる。

ビビりまくりです。

もちろん、3千何百年前のツタンカーメン氏が見たことも会ったこともない日本のガキに怒りの鉄槌を下すわけありませんでした(笑)。

知ったこっちゃないことでしょ、彼にとっても。

しばらくすると、呪いのことなどコロッと忘れて、平穏な毎日が戻ってきました。

ただ、残ったこともあります。

自分が生まれるずーーーっと昔…

僕の大好きなおじいちゃんが生まれるはるか昔から、人っているんだ…

そういう気持ちが植え付けられたことは間違いありません。

大昔の人たちは何を考えてたのか。そんで、どんな毎日を送っていたのだろう。

先生にそんなことを聞きましたが、らちが明かないのです。先生は、授業で忙しいですし、そもそも彼らも現代人ですし。

でも、あの怖い図書室には、昔の人たちのことを書いているらしい本がいっぱいあります。

中には大好きなマンガもありました。

「日本の歴史」ってタイトルです。中には孫悟空やクリリンは出てこないけれど、見たこともない鎧や服をまとい、よくわからないけれど戦ったり、死んだりした様子がこれでもかって書かれている。

夢中になって読みました。

読んでるうちに休憩時間はあっという間に過ぎていきます。

逃げ場だったはずの図書室が大好きな場所になりました。本を読むことの原点は、確かこのあたりにあるのではないかと思います。

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