病気の歴史を通して冷静な思考を学ぶ~『世界史を変えたパンデミック』

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歴史
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最近、ヒステリー気味に煽る報道ばかりで、テレビはもちろん、ラジオも聞くのがつらくなってきました。

とにかく、感染者数やその数字を甲子園出場校の「何年ぶり何回目」みたいな意味のない報道や、PCR検査ガー、ワクチンのアナフィラキシーガー、と…

「てーへんだー、てーへんだー」ばかりでウンザリする毎日です。

私のような人間って、結構多いと思うんだよな。

そんな「もういい加減煽りなんか聞きたくない」方に是非ともおススメしたいのが

小長谷正明さんの『世界史を変えたパンデミック』です。

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『世界史を変えたパンデミック』はこんな本

著者の小長谷正明さんは国立病院機構鈴鹿病院の名誉院長。つまり、お医者さんです。

医学にまつわる本だけでなく、歴史好きで「病気と歴史にまつわる本」も出版されています。

この本では、歴史上で人類をたびたび苦しめた数多くの感染症…天然痘、黒死病、マラリア、ペスト、チフス、スペインかぜ、HIVといった感染症が、世界史にどのように影響を与えてきたかをすごく分かりやすく、お医者さんの立場からの推察も交えて書いてある一冊です。

歴史は歴史家の立場を重視する私ですが、小長谷さんの本は「お医者さんが世界史の出来事をみると、こんな話になる」というプロの視点が分かり、

しかも筆は玄人はだしもいいところで、実に巧みで面白く読めました。

プロの視点からみると、ケッタイな防護服にも合理性あり

個人的に、面白いと思ったのは、ペスト医の防護服についての記述でしたね。

当時のペスト医の恰好

私、コレを始めて見たのは、確か高校の世界史の資料集だと思いますが、

「こんなけったいな格好で病気に感染しないなら、こんなめでたいことはないじゃんか!?」とツッコミを入れた覚えがあります。

だが、プロの目から見ると、案外当時としてはよくできているらしい。ちょっと長いが、このけったいな服を医者が見ると、どんな見方をするのか、本文を引用してみよう。

見掛けはおどろおどろしくて滑稽だが、案外それなりの医学的効果があった防護服かもしれない。使い捨てではないにしろ、全身を覆い尽くすガウンは、感染症防護服としては合理的である。病原体が何だったかは分からなかったにしても、病気の毒素が付着しないように、薄い絹などのツルツルの素材だ。手に持った細い棒は、感染した患者に直接触らずに脈を診るためのものだ。

異様なのは鳥のような仮面である。ハゲワシやコウノトリのように太くて長いクチバシには香料やハーブを詰めたのだという。最近の概念のない当時は、伝染病は悪い空気や臭気によってもたらされると考えられていた。奇妙な鳥仮面はマスクと同じく、呼吸する空気の清浄装置だったのだ。香料やハーブには抗菌効果があり、その点でも多少は防護性があったように思われる(37ページ)

このような、世界史に散りばめられた様々なエピソードをお医者さんが客観的に見ればどうなるか、という記述は、専門の歴史家にない、面白い観点だと思います。

プロでも間違える!脚気病原菌説!!

また、この本では「病原菌からの病気ではなかった」ケースも採録されています。

日本で江戸時代から明治時代にかけて怖れられた「脚気」もその一つ。

私なんかは技術の時間に座った人の膝に木づちをトンと打つと、反射で足が跳ね上がる「脚気の検査」くらいなイメージでしたが、

中学校の時、技術室でよくやってた「脚気の検査」

日清戦争では、戦死者977人に対し、脚気による病死は1860人とほぼ戦死者の2倍。日露戦争でも27000人が脚気で亡くなるという有様でした。

しかも、そのほとんどが陸軍

この脚気、海軍では「麦飯を食べれば治る」ことから栄養不足説が考えられ、麦飯を食べさせて脚気の死亡者をほぼ根絶させたのに対し、

陸軍は、当時最新の医学から頑なに「病原菌で起こる」と信じたことの悲劇でした。

こういった「専門家の錯誤」というのは、病原が明らかになるまでに無数に起こる事例らしく、その度に人類は効果のあった作戦を採用し、ダメだったものを捨てることを繰り返し

そしてパンデミックを克服してきました。

ちなみに、都市封鎖(ロックダウン)は黒死病(ペスト)の時代から行われていた方法です。

そういった経験の積み重ねから、

20世紀に流行したスペインかぜでは全世界で5億人が感染し、1億人が亡くなった大惨事となりましたが、類似のウィルスによって引き起こされた2009年の流行では

地球の人口が2倍になったのにもかかわらず2億人以上の感染、そして犠牲者は15万人という3桁違う数で抑えられました。

結局「悪貨が良貨を駆逐」してないか?

あと、著者があとがきで書いている言葉、これがこのまんまコロナ禍の現状を言い当てていると思うんですよ。

2020年5月前半の時点では、諸外国に比べて日本での人口当たりの死亡率は2桁も小さい。(中略)いずれ、学問的に検討されていくことだろう。

だが、オーバーシュートとかロックダウンなどと耳慣れない片仮名言葉で、どこか高揚した気分が反映したような口調で非常事態だと訴える政治家たちの声を連日耳にしていると、暗い予感ばかりで心が萎えてしまいそうになる。(227~228ページ)

ただ、著者のいうことにはいちいちごもっとも、と思うことがある反面…

私からすると、医学的見地も持たず、むしろ恫喝するように不安をあおるメディアも、負けず劣らず罪深いと思うのですが。

不安だけを垂れ流すシロートを見てて、なんか得でもあるんですかね。

正直、著者が書いているように、現状のコロナ禍に対しては、「最悪の状態を考えて、きちんと対処していけば被害を最小化できる」という、この事に尽きると思います。

フツーに世界史の本として読んでも実に面白いので、ご興味のある方はぜひ読んでみて下さい!

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