「頑張ること」に疲れたアナタにおススメの一冊

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先週、通勤時間に読んでいたのは、諸富祥彦さんの「人生を半分あきらめて生きる」という本でした。

この本は、2012年に出版されました。

その前年には、東日本大震災という大災害が東北地方を襲い、

明日自分が生きていると無条件に信じることが根本から覆された時でもあります。

津波で家や家族が押し流されたり、原発事故で住み慣れた土地を追われた人も少なくありません。

直接的な被害を受けなかった人でも、震災の影響を受けた私のような人間もいます。

こういった事はまさしく「人間の努力の範囲外」です。

大事な人を亡くし、よるべきコミュニティが崩壊した人、それを目の前で見ていた当時の日本人にとって

無条件のポジティブ・シンキングが全く無意味になった時代でもあります。

実際、震災前はビジネス書で「努力で現状を克服する」本が良く売れていましたが、

それだけではどうしようもない事を目前にしたとき、当時のベストセラーになったのが

V・フランクルの「夜と霧」だったりしたわけです。

その夜と霧を、当時100分de名著で解説していたのが、著者の諸富さんで、その分かりやすさに

感心したことを覚えています。

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向き合って立ち向かってもうまく行くとは限らない

もともと私自身は、30代に差し掛かってから、自分の思い描いていた姿と、実際の自分が

どんどん離れていって苦しんでいた時期がありました。

結婚、仕事、その他もろもろで何回か挫折を味わってきましたし、

精神科のお世話になったこともあります。

自分としては、学びに突破口を求めていましたが、そちらも中々捗らない。

何かに抜きんでるためには、人一倍の努力がいるわけですが、

それでも成功するのはごく、一部。

運、不運の問題もあるし、自分の力だけではどうしようもない問題も、この辺りから出てきましたし。

途中で「もう今のやり方ではやってられん!ボチボチ生きる」と開き直って現在に至るわけですが

そこまでたどり着くのに結構苦労をしましたし、試行錯誤も重ねました。

そんな人間が本書を読んでいると「まさに意を得たり」と強く感じる一冊でした。

どうにもならんことは、どうにもならん!

この本の主眼は、上手くいかないことは人生で山とある。

その時に、自分の至らなさ、努力不足を嘆いているばかりではなく、自分でどうにもならんことは

いったん「あきらめて」、自分にとって「本当に大事にしたいこと」を見極めて

そこに集中し、もう一度立ち上がる力を養うというところにあります。

 

世の「成功」と呼ばれるものは必ずしも「本当に大事にしたいこと」を実現したものではなく

世の中のイメージとか、他に押し付けられただけってことも結構ある。

昭和のサラリーマンみたいに、終身雇用を約束され、企業戦士として仕事をバリバリこなし

結婚して子供を2人作ることが圧倒的なマジョリティだった時代は

とうの昔に過ぎ去っているのに、

無理に世間のイメージを追いかけて「何とか『人並みに』頑張らなければ」って我が身をすり減らして

本当に大事な「生きる」ことが辛くなってしまっている人に

そういう「ムリゲー」を諦め、できることだけに集中する。

そのことでかえって、生来備えている生きる力が復活するという、価値の転換もすすめているのです。

私が注目したポイント「脱同一化」

特に私が、この本で気に入ったのは「脱同一化」です。

これは、一言でいえば、「問題を棚上げにしてしまう」ことです。

けれど、そうは言っても、

「でも、なんだかんだ言っても、やっぱり私が悪いんじゃ…?」

「なんでもっとこうできなかったんだろう…」といった「割り切れない気持ち」を抱くこともあるでしょう。

そんなときは、その「割り切れない気持ち」を、ちょっと自分から切り離しましょう。

そして、少し脇に置いておくようにしましょう。

 

「とりあえずは、ここに置いておこう」「しばらくは、見ないようにしよう」

と、その気持ちの置き場所を定めて、

しばらくの間、自分から切り離して、自分は「できるだけ、何も考えず」に、「とりあえず、今、できること」をやっていくようにするのです。

臨床心理学ではこうやって、

自分の問題や否定的な感情と、自分自身を分けて、距離を保つことを「脱同一化」と言い、

気持ちの置き場所を設ける技法を「クリアリング・ア・スペース」と言います。

そうした自分の問題や気持ちと正面から取り組むのではなくて、

それをとりあえず、さしあたり「脇に置いておいて」「考えるのをやめて」、

無理なく今、「できること」をやっていく。

そうやって、今のつらい状況を何とかしのいでいくのがお勧めの方法です。

(P.50~51)

私がこのくだりで思い出したのが、女優の宮本信子さんが

夫である伊丹十三さんの突然の死をどう、処理したかと話した時のことでした。

彼女はつらい思い出を「すべてを冷凍庫に入れて封印した」と話していたのです。

これもまた、自分の感情と夫の自殺という問題を切り離し、自分の心を守る大事な手段だな、と読んでいて、改めて思いましたね。

人間の生きる力が大きくすり減るときが、生きてると結構あります。

恋愛のこと、仕事のこと、未来のこと

…そして自分のことだけでなく、子どもの病気のこと、勉強のこと、将来のこと…あるいは家族や友人との別れ、とか。

僕らって、表側では笑っていますけど、心の中は結構悲しんだり悩んでいるわけです。

だけど傷ついて、傷ついて、それでも頑張る…

だけど、頑張るだけじゃキツくなってしまって、

生きることに希望を持てなくなってしまった人にこの本はすごく合っている気がします。

心理学者としての実践的なノウハウも結構ありますから、

つい自分が頑張り過ぎてしまう人に

ぜひ一読をおススメさせていただきたいですね。

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